トヨタ式”カイゼン”が、製品・サービスの質を上げ、顧客満足度を上げる?!

従業員エンゲージメント

自動車業界向けのCS調査などを行うことで有名なコンサルティング会社、JDパワーの2014年の調査で、トヨタが製品やサービス満足度で日本を始め、多くの国で製品やサービス満足度で1位を獲得しました。トヨタ=安心・高品質というイメージは世界でも不動のものとなったでしょうか、日本人としても誇らしく思いますね。

マレーシアの調査において、自動車セールス満足度 (Sales Satisfaction Index) 調査および自動車サービス満足度 (Customer Service Index)の両方で1位を獲得したUMWトヨタ自動車(株) のDatuk Ismet Suki氏は、トヨタ式の”カイゼン”が1位獲得につながったと話します。

ご存じの方も多いと思いますが、「カイゼン」は「改善」のこと。日本の製造業で生まれた工場の作業者が中心となって行う活動・戦略のことで、本来の意味と区別するためにカイゼンと表記されています。生産管理のあり方として世界的に有名となった”トヨタ生産方式”を体系化し、トヨタのカイゼンの神様とも呼ばれた元副社長、大野耐一氏(没1990年)が作ったカイゼンのための訓示が『トヨタ式 鬼十訓 私が大野耐一から学んだこと』に集約されています。トヨタが製品・サービスの質を上げ、顧客満足度ナンバーワンの常連となるに至ったその十訓を見てみましょう。


【トヨタ鬼十訓】

●第一訓 君はコストだ。まずムダを削れ。それなくして能力は展開できない。

ムダは隠れる。仕事の隠しごとをまずやめよ。
「不良が出ると、人間はとかく「あとで手直しすればいい」と、見えないところに隠しおくものである。仕事の流れをとめることをしない。だから、そのときは誰も困らない。しかし、困らない代わりに、何の対策も取らないのだから、いずれ同じような不良が出る。これが大きなムダである。さらに「手直し」という本来やらなくてもいいムダが出る」


なぜ不良(問題)が起こったかを皆で考え、顕在化し、それを共有財産/ムダをなくすヒントとして活用したいですね。


●第二訓 始めたらねばれ。できるまでやめるな。中途半端はクセになる。

五回のなぜ
「五回『なぜ』を自問自答することによって、ものごとの因果関係とか、その裏にひそむ本当の原因を突きとめることができる」


子供が親に「何で?何で?」としつこく聞くことがありますが、それと同じように「なぜ?」を繰り返し一つ一つ掘り下げていくことで、表面には表れない原因を知ることができるようです。問題の原因究明以外にも、お客様からのお問い合わせ内容や、売れる理由などを深く掘り下げるのにも使えそうですね。


●第三訓 困れ。困らせろ。安易を好む人と決定的な能力格差がつく。

答えを教えるな。考えさせる工夫をしろ
「厳しい環境に人を置くだけでなく、人の知恵を信じ、困ったときはいつでも手を差し伸べる準備があってこそだ。『期待に応えよう』とがんばらせるヒューマニティーが大切である」


リッツ・カールトンの事例にもあったように、信頼されているという実感はモチベーションアップにつながるもの。だからこそたとえ窮地に立たされたとしても、考える力やカイゼンする力を行動に結び付けられる社員が育ち、結果良い製品やサービスを生み出してくれるはずです。


●第四訓 ライバルは君より優秀だ。すなわち君は「今」始めることでのみ勝てる。

様子を見すぎるな。タイミングに見放される。 
なんでもその場でやれ。なんでもすぐ片づく。 
明日でも対策は見込めるが、今日なら良策が仕込める。 

自動車業界では、モデルチェンジはその車が売れている時にすべきだと言われているそうです。売れている車をモデルチェンジすることに躊躇して、売れ行きが落ちてきてからモデルチェンジしても、もし人気が落ちてしまったとしたら、その人気を復活させるのは相当大変なこと。だからこそ、売れていて余裕があるタイミングにモデルチェンジをするのが得策。他の業種においても、例えば合理化や効率化をするのであれば、業績が苦しくなってから行うのではなく、業績がよいその時に行うのが、一番効果が見込めるのではないでしょうか。機会を逃さないためにも、「思い立ったらすぐ行動」ですね!


●第五訓 仕事に痕跡を刻め。十割を命じられても十一割目を自前の知恵でやれ。

「できた」で止まるな。「もっとできる」に進め。 
言葉通りにやらず、言葉に知恵を足せ。

トヨタで言われているのが「知恵の数だけ競争に勝てる」ということ。他社と同じような機械を使って同じような手順で作っていても、同じようなものしか作れないですよね。そこでトヨタは1951年(昭和26年)に「創意くふう提案制度」を導入し、言葉通り知恵の数を成長へ活かそうとしました。以降、2011年までの提案数は何と約4000万件以上! 年間1000万台の車を世界中で生産し、2兆円を超える利益の源はここにあると言ってもいいのではないでしょうか。機械に加えた「人間の知恵」というカイゼンは、大きな原動力になるとの証拠ですね。


●第六訓 平伏させず心服させろ。そのためにはだれより長い目で人を見ることだ。

手をかけ時間をかける。そうしてこそ人から声がかかり始める。
まずやらせるな。まずやってみせろ。
汗をかかせるな。知恵に欠けてくる。

この訓示は、上司が部下に対して業務の目的を明確にして取り組んでもらうということ、自分がまずお手本を見せるということ、業務を丸投げせず部下に考えさせながらもアドバイスや答えを与えるということの大切さを表しています。理解・納得してはじめて、人は動き、育ちます。組織的にカイゼン力を高めるために、このサイクルが継続されることは非常に重要ですね。


●第七訓 「できる」とまず言え。そこに方法が見つかる。

「できる」を信じる。「できない」は疑う。 
知恵は平等だ。知恵の引き出し方で差がつく。

一つの業務を遂行しようとする時、「できない」と思う場面に出くわすことがあると思います。「できない」と言って諦めてしまうことは簡単ですが、それでは発展も成長もないですよね。だから、「できる」を信じてその方法を知恵を絞って考えてみることが大事。そうした挑戦が、会社だけでなく自身の成長にもつながるはずです。

先日青色発光ダイオード(LED)の開発でノーベル物理学賞を受賞した3教授のうちの一人、天野浩・名古屋大学教授も、開発時に感じた挫折、そして当時中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の存在が成果を出していることを知り、「じゃぁ……」と自分も試してみたら成功したことについてこうコメントしていました。「何かをやるときに、必ずできると信念を持ってやるのと、ダメだろうなと思ってやるのとの違いを、この時ほど痛感したときはありませんでした」。やはり「『できる』を信じる」のパワーは偉大ですね!


●第八訓 失敗を力にしろ。真の自信も運もリカバリーから生まれる。

成果を上げるには、ネを上げないことだ。 
「失敗だ」とあきらめるな。「失敗にしたくない」と発想せよ。

偉大な発明家として知られるエジソン、実は電球を発明する前に1万回も失敗したのだとか。それだけの失敗を重ねながらもようやく成功した時、ある新聞記者に「あなたは電球を発明するのに、1万回も失敗したそうですね」と聞かれ、それに対し「私は失敗したのではありません。うまくいかない方法を1万回発見したのです」と答えたのだとか! この訓示が表すのは、エジソンのように、失敗を価値のあるものと捉えて、あきらめないことの大切さではないでしょうか。


●第九訓 労働強化を避けよ。人間「ラクになるには」に一番頭が働く。

「平均的に」はラクではない。「最速で」がラクである。作業改善、設備改善、工程改善の順で検討する。

作業改善を最初に行うのがトヨタ式。設備でラクをしようとするのではなく、まず仕事のやり方を変えるのが効率化の一番の近道。ここで労働強化にならないよう細心の注意を払う必要がありますが、できない原因をしっかり追究することで、労働強化防止策となります。


●第十訓 お客の叱声は成功の呼び声だ。逃すな。いじけるな。考え抜け。


お客様の叱声はカイゼンの素の宝庫、経営資源となるものです。だからこそ、お客様の叱声をクレームと受け止めることなく、「お客様の強い感情が表れた声」と捉えてみてはいかがでしょうか。これは仕事だけでなく普段の人間関係においても言えることですが、自分は相手の期待通りに行動したと思っても、実は違っていて「そうじゃない!」なんて言われること、ありますよね。でもその声に耳を傾け、気づきと学びを得て「じゃぁ次はこうしよう」とカイゼンにつなげられたら、成長と成功につながるはずです。


上記は大野氏の十訓のポイントの一部となりますが、毎日意識することで自然とできるようになり、従業員エンゲージメント、顧客エンゲージメントの強化につながるのではないでしょうか。 十訓だけでもいつも目に見えるところに貼っておくのも効果的かもしれません。アマゾンの会長兼CEOのジェフ・ベゾス氏も実行しているというこのトヨタ式カイゼン、皆さんもできるところから少しずつ習慣化していきませんか?

引用:
Topping the charts in customer satisfaction (The Star Online)
改善(ウィキペディア)
新生トヨタとTQCの広がり(トヨタ自動車75年史)
ノーベル賞、「3人同時受賞」の深い意義(東洋経済ONLINE)
アマゾンのジェフ・ベゾスが実行するトヨタ式改善「顧客は常に正しい」(ビジネス+IT)