タフな上司より、思いやりのある上司が部下と会社を成長させる!

エンゲージメント

私たち人間はミスをする生き物です。ミスをした人に対してもフラストレーションを感じてしまうこともあります。特にそのミスが大きなプロジェクトに悪影響を及ぼすものだったり、チームや会社のイメージを悪くするものだったりしたら、そのフラストレーションは相当なものになってしまいますよね。

こういったケースの場合、叱るのが当然の行動のように思えます。同じようなミスを起こさないよう、教訓としてしっかり学んでほしい、そういう気持ちで叱る人が多いのではないでしょうか。それがチームメンバーの教訓にもなるはずですよね。正直、叱ることがフラストレーションの解消につながるのも確かです。

でも実は、叱るよりも思いやりを持って接する方が、長期的に見るとより良い結果をもたらすということが様々な研究結果から分かっています。


大切なのは部下に対する興味と思いやり

部下からの忠誠心と信頼、尊敬の念を得るために最も効果的なのが、相手への思いやりと興味を示すことだという研究結果があります。ポジティブな職場環境を育み、部下に愛情を注ぐ上司のもとで働く人たちは、上司に対する忠誠心が深くなり、より懸命に働くのだそう。思いやりと興味を持って接している現場を部下が見る機会が多ければ多いほど、その度合いはどんどん増していきます。もし皆さんの会社に、人望の厚いマネジメント層の人がいたら、その人の部下へのアプローチを観察してみると良いかもしれません。

逆にフラストレーションや怒りをあらわに部下に接する上司が、部下からの忠誠心や信頼を得ることはまずありません。一方的に責めてしまったり、他のメンバーがいる前で厳しく叱ったりしてしまったら、なおさらのこと。上司と部下は持ちつ持たれつ。互いに補いあうことが大切です。

脳神経画像の研究では、私たち人間は、信頼できるリーダーにより敏感に反応し、その信頼感は思いやりによって増加するということも分かっています。そのように部下の中に生まれた信頼感は、パフォーマンスの向上につながります


怒りとフラストレーションはコントロールすべし

アメリカのスタンフォード大学に、「思いやりと利他主義研究教育センター(The Center for Compassion and Altruism Research and Education :CCARE)」という思いやりに特化した研究施設があります。同センターの責任者であり神経外科医のジェイムズ・ドウティ医師は、外科医として最初の手術を迎えた時、あまりの緊張から大汗をかき、汗で手術室を汚染してしまったのだとか。手術自体はすぐに終わるようなもので、患者さんも決して重病を患っていたわけではなく、手術室の清掃もすぐに完了できる状態だったにも関わらず、当時のドウティ医師の上司はカンカンに怒り、彼を手術室から追い出したのだとか。家に帰ったドウティ医師、号泣せずにはいられなかったそう。

ドウティ医師は、「もしあの時僕の上司が僕の状況を理解して、『緊張していたのは分かるけれど、緊張していたら執刀医にはなることはできないんだ。分かるね? 僕は君に手術を通して教えたいことがある。だから外に出て心を落ち着けてくるといい。手術帽もしっかり確認して、汗が落ちないように調節するといい』なんて言ってくれていたら、彼は僕のヒーローになっていたはずなのに……」と当時を振り返ります。

怒りの感情で対応してしまうと、忠誠心や信頼をなくしてしまうだけでなく、部下のストレスレベルが上がってしまうことで、意欲と創造性の枯渇を引き起こすのだとか。ドウティ医師によると、上司に対する恐怖や不安、信頼の欠如は、相手に対して心を閉ざしてしまう原因に。また恐怖に対する反応が脳内で起こると、それが認知制御(意思、記憶、注意、操作などの機能)に影響し、生産性や創造性を消失させてしまうことになるのだそう。逆に私たちが安心している状態の時は、脳のストレスレベルが下がるという研究結果もあります。

部下とは適度な距離感を持ち、毅然とした態度で接することが良いと考える人も多いかもしれません。でもこれらの研究結果を見ると、優しさや親近感などの温かさがあった方が、仕事も人間関係もスムーズになることが分かりますね。では失敗した部下に対し、どのように対応すればよいのでしょうか。


部下に思いやりを持って接するためにできること

1. ネガティブな感情にコントロールされない
人間だからネガティブな感情を持つのは当たり前のこと。特に部下が失敗した時は自然とそういった感情が湧き起こってくるはずです。でも、怒り、フラストレーションなどの感情に支配されて、自分の判断や対応に影響させないようにしてください。どうしてもコントロールできないネガティブな感情にぶつかってしまったら、時間を置いてその感情から離れ、冷静な自分を取り戻しましょう。短い瞑想も効果的です。

2. 部下の立場になってみる 

前述のドウティ医師に起こった出来事を考えると、もし上司が彼の立場になって考えられていたら、「初めての手術で緊張している」という気持ちを汲み取ることができたはずです。さらには自分の最初の手術のことを思い出すことで、より思いやりのある対応ができたはずです。

でも「相手の立場に立って物事を考える」ということは、自分の感情や行動をコントロールしなければいけないことから、簡単に思えて実はとても難しいことです。でもこれは意識をして努力するしかありません。主観的な視点だけで見るのではなく、相手の立場に立った視点、さらには客観的な視点で、気持ち、感情、思考にフォーカスします。すると、相手の立場をイメージしやすくなったり、客観的な判断ができるようになり、それが結果相手を思いやる言動を生むはずです。

3. 部下を許す心を持つ

上司と部下の間にある力関係や利害関係。これがあると許せないことが度々起こります。でも上記2番にあるように部下の立場を心から理解して共感したり、部下を寛容な視点で見てあげたり、失敗に強く固執せずに柔軟に受け流すしなやかさを持つことが大事です。許し許されることで

・お互いの幸福感や人生の満足感が増幅し、ストレスやネガティブな感情を大幅に減少させる
・上司と部下の間の絆を深め忠実心が高まる

という研究結果がありますが、特に幸福感の部分は

・幸福度の高い従業員はそうでない従業員に比べ、生産性が30%、営業成績が37%、創造性に至っては3倍も高くなる

と数字でも表されていることから、思いやりを示す習慣を意識して身に付けて行くことが、これからのリーダーに必要とされるのではないでしょうか。

参考:
https://hbr.org/2015/05/why-compassion-is-a-better-managerial-tactic-than-toughness