ユニクロは「従業員エンゲージメント」に舵を切ったのか?店頭での接客、顧客サービス革新

従業員エンゲージメント

日経ビジネス最新号(2014.03.24)の特集記事、「ユニクロ大転換 柳井正の決断」は、エンゲージメントの視点からも興味深い内容でした。

ユニクロの「大転換」とは、パートタイマーやアルバイトの大部分を正社員化し、スタッフが「主役」の経営に切り替えるというもの。これは、単に「ブラック企業」という批判を受けたためではありません。

これまでは「店長」が主役だった

これまでのユニクロは、チェーンストア・オペレーションに立脚し、本部が、店舗開発、商品開発、販売手法などのあらゆる側面を主導、一方、店長は各店の指揮官として、本部の指示を現場に伝え、履行する役割を果たしていました。

この枠組みにおいて、各スタッフの役割は言われたことを忠実にやればよい、いわば「部品」的な扱いだったのです。しかし、もはや、本部主導でやれることはやりつくしてしまった感がある。となると個々の店舗の販売力を伸ばすしかないという状況になっています。

パート・アルバイトが自律的に動く店舗は強い

実は、ヒット商品がなく、天候が不順のため売上が低迷するような事業環境でも、売上を伸ばしている店。また、ある店長が就任したとたん、売上が20-30%増加するような店があるのだそうです。調べてみると、優秀な店長がいる店では、パートやアルバイトが自律的に働いていることがわかったのです。

私の推測ではありますが、優れた店長はスタッフを巻き込み、ただ言われたことを粛々とやるのではなく、どうやったらもっとお客様の商品選びが楽になるのか、あるいはより優れた接客ができるのか、といった日々の課題をスタッフ自らが考え、実行するような仕掛け、仕組みづくりを行っているのではないかと思います。

店舗の魅力を高め、また顧客サービスを向上することで顧客満足度を高めようと、スタッフが自ら考え、行動することとは、まさに「従業員エンゲージメント」が高いレベルにあることにほかなりません。

従業員エンゲージメントとは、会社・店舗のビジョンやミッション、また共に働く仲間に対して共感や愛着を感じ、企業・店舗の発展のために自律的に動いてしまうような状況を指します。優れた店長は、ユニクロに限りませんが、こうした従業員エンゲージメントを強化することに長けているのです。

一人ひとりが主役になる経営

柳井正氏(ファーストリテイリング会長兼社長)は、日経ビジネスの取材に対して、スタッフ個々人の個性や価値観を大切にする経営について「世界の潮流がそうなっている」と指摘し、

“『経営は何をすべきか』という本があて、これから生き残るために必要になるのは「一人ひとりが主役になる経営」ということが書いてある‘”

“僕らもビジネスをやっているのは社会のためで、金儲けを目的にひゃっているわけじゃない。そういうことを全社員が」信じられるような企業にしない限り、特に小売業ではうまくいかない”

と、スタッフが企業のビジョンやミッションに共感してもらうことの重要性を強く認識したようです。

 

高いリピート率、購買単価の上昇、好意的な口コミといった顧客ロイヤルティを高めるためには、お客様が、自社のビジョン、ミッション、価値観に共感してもらい、また愛着を持ってもらうこと、すなわち「顧客エンゲージメント」強化に取り組むことが有効ですが、その基盤となるのは実は企業と従業員との強いきずなづくり、すなわち「従業員エンゲージメント」です。

日経ビジネスの記事を読む限りでは、勝手ながら、ユニクロは「従業員エンゲージメント」に舵を切ろうとしている、と考えることができます。今後、顧客の立場から見て、ユニクロの店舗がどのように変わっていくのか楽しみです。

 (執筆者)

松尾順

松尾 順

株式会社シンクー

エンゲージメントフォーラム CEO(Cheif Engagement Officer)