<蔵出しレポート3>接客、顧客サービス改善を目指して:NPS®を補完する新指標「CES」- Customer Effort Score (NPS Conference 2014 in Miami)

エンゲージメント

マイアミで開催されたNPSカンファレンスのキーノートスピーチの中で、最も印象的だったもののひとつが、CEB(会員制のコンサルティングサービス会社)のシニア・ディレクター/エグゼクティブ・アドバイザー、Rick Delisi氏の講演でした。

Delisi氏は顧客ロイヤルティの専門家であり、主にコールセンターなどの顧客サービス、コミュニケーションについてのコンサルティングを行っています。

今回は、Delisi氏の講演のポイントについて簡単にご紹介します。

顧客を歓喜(Delight)させることは採算に合わない

Delisi氏はまず、125,000人以上の顧客、5,000超の顧客サービス部門、100を超える企業を対象とした調査から得た大きな3つの知見(Findings)について解説してくれました。

1つめの知見は、顧客対応などにおいて、顧客を歓喜(Delight)させようとすることはペイしない、つまり採算に合わないというものです。

なぜなら、顧客歓喜は、お客さまの期待を超えるサービス、対応がなされた時に起こるものですが、だからといってロイヤルティが大きく向上するわけではない、ということが調査結果から明らかになったからです。つまり、顧客歓喜を実現するための努力の量に比べて、ロイヤルティの向上はそれほどでもない、ということです。

ただし、Delisi氏は、その顧客歓喜の努力を完全に否定しているわけではありません。それ以前に、優先すべき点があるということです。それは、後述しますが、お客さまが抱える問題・課題を解決するために、お客さまがしなければならない努力を減らしてあげるような対応を行うことでロイヤルティを下げる要因を除去するということです。

顧客サービスはロイヤルティを低下させる

2つめの知見は、顧客サービスはしばしば、ロイヤルティを下げる方向に働くというもの。

これはちょっとトリッキーな表現ですね。具体的には次のようなことです。お客さまが企業のコールセンターやWebサイトにコンタクトする状況とは、なんらか問題・課題を抱えて困っているときがほとんどです。そんな状況のお客さまに対して企業の顧客対応はしばしば不適切であるがゆえに、ロイヤルティを下げてしまうことが多いという意味です。

たとえば、電話をかけたら、あちこちたらいまわしにされる、相手が変わるたびに同じ説明を繰り返さなければならない、WebサイトのFAQでは問題が解決できず、コールセンターにわざわざ連絡しなければならなくなった、といった形で、お客さまに無用な努力を強いてしまう。このため、顧客サービスは、ロイヤルティを上げるよりも、低下させてしまう結果になりやすいのですね。

満足はロイヤルティを意味しない

お客さまが満足しているからといって、かならずしもロイヤルティが高いわけではない、というこの3つめ知見はすでにある程度私たちも認識していることですね。ここで言うロイヤルティとは、リピート購入や好意的な口コミといった、好ましい行動を起こすかどうかということです。

実際、 どんな製品・サービスであれ、とりあえず満足はしているけど、それは他の選択肢がないから、昔から利用しているから、といった受け身の理由で選択しているブランドがありますよね。おそらく、より魅力的な製品・サービスが登場したら簡単に乗り換えてしまうでしょう。満足しているからといってロイヤルティが高いとは限らない、というのは企業が受け入れなければならない現実です。

ロイヤルティを下げる要因を除去せよ!

Delisi氏は、以上の3つの知見を踏まえて企業が優先的に取り組むべき方向性を示しました。

それは、冒頭に述べたように、お客さまが抱える問題・課題を解決するためにコールセンターやWebサイトにコンタクトした際、お客さまにできるだけ努力をさせないような仕組みを構築し、対応をするということです。

具体的には、

・Webサイトであれコールセンターであれ、できるだけ初回のコンタクトで問題・課題を解決する。

・問題解決のために、複数のチャネルに何度もコンタクトしないですむようにする

・相手が変わるたびに、お客さまが同じ説明を繰り返さなくてもいいようにする

・将来起こりうる問題・課題についても先回りして解決方法を与えることで、再度連絡しなくてもすむようにする。

といったことです。

このようにしてお客さま側の努力を減らした体験のことをDelisi氏は

Effortless Experience(努力少経験)

と呼んでおり、顧客サービスの現場において、お客様側の努力(顧客努力:Customer Effort)が高い状況と低い状況を比較すると、顧客努力が低い場合においてロイヤルティが大きく向上することが調査結果で裏付けられています。

NPSを補完する新指標「CES」-Customer Effort Score

そして、Delisi氏は、顧客対応の現場において顧客努力がどの程度なのか、を測定する指標として

CES - Customer Effort Score

の採用を提唱しています。

これは、以下のような質問をお客さまに投げかけ、どの程度そう感じるかを聞くものです。

「企業は、私の問題を扱う際に、それを楽にやれるようにしてくれた」

(The company made it easy for me to handle my issue.)

Delisi氏は、この指標を用いながら、様々な顧客接点での顧客対応にける顧客努力(Customer)を削減することに成功すれば、ロイヤルティを下げてしまう要因を除去でき、結果的にNPSの向上につなげることができると指摘しています。

CESはまだ日本では全く知られていませんが、NPSとともに顧客サービスにおける重要な指標としてこれから注目されるのではないでしょうか?

エンゲージメントの枠組みにおいても、エンゲージメントを低下させる要因となる「顧客努力」をできるだけ減らすことは極めて重要であり、CESをNPSと併せて調査に組み込み、定点観測する必要があると私か考えています。

なお、Delisi氏は共著で昨年、以下の本を出版しています。まだ翻訳版は出ていませんが、今回ご紹介したことがより詳細に解説されています。

『The Effortless Experience: Conquering the New Battleground for Customer Loyalty』

Effortless experience resized 600

 NPS(R)はBain&Company、Fred Reichheld、Satmetrix Systemsの登録商標です。

 (執筆者)

松尾順

松尾 順

株式会社シンクー

エンゲージメントフォーラム CEO(Cheif Engagement Officer)