VOCを聞くことで、生き返ったニューヨーク・タイムズの戦略

コラム

アメリカではメディアが広告モデルからの脱却を図っています。広告を減らし、コンテンツを充実させることで、ミレニアル世代の読者を増やしているのです。

ロイター研究所によると、アメリカの18〜24歳までの若者がオンラインニュースにお金を支払うようになっています。有料読者が2016年の4%から17年には18%に増え、わずか1年で4倍以上になったのです。

同期間に『ニューヨーカー』はミレニアル世代の購読者が 前年同期と比べて倍増し、『アトランティック』は 18〜40歳の購読者が130%増加するなど、購読者から記事を評価されるようになっています。 
 
なぜ、アメリカの読者もパブリッシャーも、広告ベースのビジネスモデルではなく有料コンテンツの定期購読サービスのビジネスモデルに切り替えたのでしょうか?
 
もっとも大きな理由は広告収入が見込めなくなったことです。
『メディアポスト』誌によれば、アメリカ人のおよそ4分の1が
何らかの広告ブロッカーを使用しており、年間160億ドルの売上を
パブリッシャーは失っているのです。
 
また、2016年に支出された全オンライン広告費の49%がグーグルに、 40%がフェイスブックに使われて、残り11%をその他すべての企業が分け合っています。オンライン広告はもはや二強以外には旨味のないものとなり、これに頼っていると経営は成り立たなくなっているのです。また、広告を得るためにページビューを増やすことで、記事の質が低下し、結果自らの首を締めることにメディアが気づいたのです。
 
サブスクリプション・サービスに抵抗のない若い世代は、記事が役立つと思えば、お金を払ってくれます。彼らは広告を邪魔なものと見ているので、両者の思惑が一致したのです。

ストリーミングサービスに料金を支払う人とオンラインコンテンツに料金を支払う人のあいだには強い相関関係があることがわかっています。健全なサブスクリプション事業を構築するためには読者が望んでいることを知る必要があります。読者と直接つながり、エンゲージメントを高めることで課金を継続できるのです。

メディアはリーセンシー(最後に訪問したのはいつか)、フリークエンシー(訪問頻度)、ボリューム(読んだ記事数)の3つのデータを注視し、良記事を配信するようになりました。広告主ではなく、読者にフォーカスすることで、ファンを増やしました。
 
読者とのエンゲージメントを高めた結果、『ニューヨーク・タイムズ』は、購読料と広告料の収益逆転させたのです。『ニューヨーク・タイムズ』はデジタル版のみの有料購読者が260万人獲得しています。その約15%は世界195カ国に分散しています。オンラインでエンゲージメントを高めることで、世界中の有料読者を顧客にできたのです。
 
『ニューヨーク・タイムズ』はシリコンバレーで一般的なベストプラクティスのすべてを実行しています。
1、サブスクリプション収入の確保
2、国際展開、多層的サービス提供
3、フリーミアムの提供
4、カスタマー・インサイトの活用

5、相当な規模のTAMの達成
(TAMはTotal Addressable Marketの略で、ある製品やサービスが対象市場を100%獲得したときに得られる年間収入を示す数字〕

 
『ニューヨーク・タイムズ』が成長するためには、有料購読者のエンゲージメントが欠かせません。彼らは顧客体験を高めるために、日々
自社の読者を知り、最善の情報を提供する必要があります。オンライン上の読者の動き(VOC)をチェックすることで、彼らは復活を果たしたのです。読者のエンゲージメントとサブスクリプション・モデルによって生き返った『ニューヨーク・タイムズ』の動きから、私たちは多くの学びを得られます。

参考図書 ティエン・ツォとゲイブ・ワイザートのサブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル 

書籍サブスクリプションの関連記事はこちらから


Designed by Rawpixel.com