「琴線感度」カスタマージャーニーマップで、ロイヤルティを上げよう

コラム

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こんにちは。トータル・エンゲージメント・グループ コンサルタント 井上です。

「コンサルタントを交えて、ペルソナを皆で描いてみる。でも、結果がまるで出ない…」

当社のパートナーコンサルタントの渡部弘毅(ISラボ代表)は、そんなマーケティングでの「あるある」を、こう一刀両断します。「ペルソナではなく、セグメントが重要。お客様の実態を定量的に出し、マップ化していくというのが、僕の方法論なんです」。そこで重要になるのがNPSだとしています。

1人の客への「想定」が、10万人の客にも合っていると言えるのか?

渡部自身も、かつてはペルソナ型でマップを描いていましたが、腑に落ちないことが多かったそうです。例えば、アパレル。「五十代の主婦は、こういう行動を起こす。だから、こういう試着が有効だとしているけど、あくまで1人のことを勝手に想像しているのであって、じゃあ10万人の客がいたら、皆そうなのか? お客様の気持ちになって、皆で考えていくというのは凄く価値があるけど、『本当にロイヤルティを高めているの?』。そこまで繋がらないケースが多いんじゃないか」。

突き詰めると「ペルソナを、皆が感性で描いているから。そうではなく、あくまで定量的に出していくべき。お客様の何%が、ここでどんな気持ちだったのかなど、セグメントごとの細かい洗い出しが重要なんです」。

購入時に於けるお客様の何%が、どこでネガティブに、または、ポジティブな気持ちになったかなど、実態を定量的に出し、マップ化していく。それには、NPSのアンケートを取るのが不可欠だとしています。

データから割り出した「琴線感度」がロイヤルティ向上の鍵になる

顧客の実態に沿ったカスタマージャーニーのマップを作る時代になりつつあり、想定上のペルソナは余り意味がありません。ただし、渡部は「アンケートを取る時の仮説はみんなで作ろう。その仮説を定量的に検証し、マップにしていくことが重要だ」と力説します。

そこで提唱するのが「琴線感度」。お客様が示す5段階の満足度(大いに満足、満足、普通、不満、大いに不満)から、トップツーボックス(大いに満足、満足)の人達を抜き出し、琴線感度を座標に組み込みました。

「相関が絶対に出る」のも、利点だとしています。「各プロセスでの満足度で、トップ・ツー・ボックスを付けた人だけを抜き出してきて、NPSなどを測る。高い満足度を示した人でも、よりロイヤルティーが高い、NPSが高いとなれば、それだけ琴線に触れているプロセスとなる」。

また、アパレルの例を出して、こう説きます。

ショップで、挨拶と接客のプロセスで、トップ・ツー・ボックスが同じ80%だとしても、後者が高いとなれば、「試着のプロセスの方が琴線に触れているとなる。だからNPSが高い」。そうなれば、試着プロセスに従業員はもっと熱を入れようとなっていきます。

あるクラウドベンダーでは、商品そのものがもたらす基本価値とサービスプロセスがもたらす体験価値の両方での計測だったのですが、何と琴線に一番触れたのは基本価値の「価格」。「体験が良かったというのではなく、価格が一番では、やがてアマゾンが同じ商品を出してきたらやられてしまう」。

こうした琴線プロセスを見ることで、課題がより明確化する。丁寧にNPSを上げ、カスタマージャーニーと琴線指数を取ることが重要だとなります。

実際、あるアパレルで琴線に触れていたのはカスタマー・デスクだったことが、こうした分析から判明。困っているお客様に丁寧な電話応対をしたことで、ロイヤルティーが上がったのです。「満足している人と不満を持っている人の両方のNPSを分析し、その結果『もっとカスタマーデスクに投資すれば、絶対にロイヤルティーが上がる』と裏付けの出来るデータが出来ました」。

琴線体験のランキングから具体案を割り出して現場に落とし込む

渡部は、琴線体験のランキングというのも出しています。ポジティブ体験のNPSランキングで「レポートの分析の仕方を指導をしてもらって助かった」というのが一番琴線に触れる体験だったとする、あるクラウドベンダーの事例を引用。「ネガポジ、各プロセスでのランキングもマップ化する。ここまで作ると、先に触れた『試着』などに落とし込めるんです」。

もっとも、定量データによるマップ作成は、万能薬ではありません。お客様が想定もしなかったようなイノベーション系のサービスには弱いとしています。「定量というのは、今までのお客様の体験をベースにしているから」です。また、新規顧客へのプロモーションであれば、今までのペルソナ型カスタマージャーニーマップが有効だとしています。

VOCを活用した新しいカスタマージャーニーマップの作成が、既存店などの売上を伸ばす秘策に繋がる。そのためにも、NPSによる定量データを作成に活かすべきだと、渡部氏は結論しました。「我々は、仮説は仮説として作ります。それをアンケートに落とし込み、お客様に検証してもらう。そのプロセスが実は重要なんです。描きっぱなしにするのではなく、PDCAを回していく」。

なお、渡部は、これをテーマにした著書を執筆中。刊行が待たれますね。


(トータル・エンゲージメント・グループ コンサルタント 井上悟)