AIに職を奪われないためにはどうすればいいのか? 職場の機械化・自動化は止まらない

顧客体験

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AIはファッション業界の職を奪うのか?

スマホと連動させることで体型を瞬時に測定できるZOZOSUITが発表されてもう半年近くが経ちました。このたび発送が開始されたと発表されましたが、ネット上で見ている限りにおいて、手元に届いたという人がほとんどいません。そのため、このZOZOSUITが存在するのかと疑う声すらあります。

ZOZOSUITを発表した際に、スタートトゥデイの前澤裕作社長は体の部位の数値を計測することで着ている人がかっこよく見える服を作ると宣言しました。体の部位を事細かに計測することで美しく見える黄金比を作り上げたいのだということですが、当方は極めて冷ややかに見ています。

もちろん、ZOZOSUITは壮大な試みだとは思いますが、体の部位を直線でつないだだけでは美しい服にはなりません。このZOZOSUITに限らず、世の中は現在、データとコンピュータを使用したAI(人工知能)に対する注目が集まっています。また人手不足の解消を目的とした店頭への自動レジや券売機の導入もこのAIと絡めて注目をされています。そして、それによって「AIに取って代わられる職業はなにか?」というのが一番の関心事になっているのではないかと感じます。ただ、現段階での予想はあくまでも予想に過ぎず、将来的には外れる可能性が大いにあります。居酒屋談義程度に聞き流せば良いでしょう。

たしかにレジ打ちや注文を聞き取る人はこれから必要なくなるでしょう。それこそ機械にやってもらった方がはるかに正確ですし、よしんば間違えることがあったとしても「どこが間違えたのか」を正確に見つけることができます。小売店に勤務されている人なら閉店後のレジ閉めで10円や5円合わなかったという経験がある人は数多くおられるのではないかと思います。それは絶対にどこかで釣銭を渡し間違えているか、お客から受け取った金額が間違っていたかのどちらかしかないのです。しかし、人間だとどこで間違えたのかは記憶も曖昧でわからないことが多くあります。

これを機械に置き換えれば間違いの発生率はグっと低下しますし、間違えてもどの段階で間違えたかというのが過去記録を調べれば容易にトレースできます。また間違えた原因が何なのかということも調べやすくなります。注文を聞くのも同じです。東南アジアのマクドナルドではすでにカウンター店員は廃止され、券売機で欲しい商品の券を買うようになっています。また大手居酒屋チェーンやファミリーレストランでは注文は専用のタブレット型端末で行うようになっています。通常の店員に注文することに比べて聞き取り間違いや付け忘れが圧倒的に減ります。

個人的には居酒屋などで経営者の親父さんや店員に口頭で注文することがひどく苦痛になっています。付け忘れはあまりありませんが、聞き取りの間違いによるオーダーミスは珍しくありません。タブレット型端末や券売機にすればこれはゼロになります。間違ったとしてもこちらの押し間違いなので相手に対してイライラすることはなくなります。逆に券売機やタブレット型端末を導入していない店はどうしてしないのかと疑問で仕方がありません。

例えば、牛丼のすき家やサイゼリヤはいまだに券売機もタブレット型端末もありません。そのためストレスを感じることが時々あります。しかし、すき家と同じグループ会社のなか卯は券売機が導入されていて注文時にイラっとすることはほとんどありません。同じグループ会社のなか卯に導入できるものがどうしてすき家に導入できないのか不思議でなりません。

洋服店でいえばジーユーの自動レジは極めて快適です。金額計算も瞬時に行われます。畳んで袋に入れるのはセルフですがその程度の手間はまったく面倒ではありません。むしろ、店員が畳んでくれているのをじっと待っていることの方がはるかに苦痛です。ですから、筆者は、レジはできるだけ機械にすべきだし、注文も券売機やタブレット型端末に置き換えてほしいと心より願っています。

ですが、同じ調子ですべての職種が機械に代わるとは思っていません。よく、「販売員はAIに取って代わられる」という人がいますが、幾分かは取って代わられるかもしれませんがすべての販売員が取って代わられることになるとは全く思いません。現在の洋服販売店では有名店になればなるほど販売員にマニュアルがあります。ガチガチに縛るか比較的緩やかなのかは店やブランドによって違いますが、マニュアルを基礎としていることは変わりがありません。しかし、同じマニュアルを基礎としながら「売る販売員」と「売れない販売員」の2種類が存在します。同じマニュアルを使用しているのに売れる人と売れない人の格差は激しいのです。

顧客とのエンゲージメントを高めよう!

では、どうしてこういうことが起きてしまうのでしょうか?それは販売員というのは、マニュアル通りにしているだけでは成り立たない職業だからといえます。お客との会話(接客トーク)には「間(ま)」というものが必ず存在します。テンポと言い換えてもいいのでしょうが、そういうものがあって、間が悪い人は会話が弾みませんし、お客も満足感は得ません。反対に間のイイ人は会話も弾みますし、お客も納得して購入します。顧客を喜ばせる販売員が多ければ多いほど、顧客とのエンゲージメントが高まり、NPSもアップします。

会話の「間」ということでは、落語も同じでしょう。まったく一から作り上げる創作落語と、昔から受け継がれてきた古典落語があります。古典落語の場合はストーリーもセリフも決まっていますが、同じ題材で演じても面白く聞ける落語家とそうでない落語家があります。これは間が良いか悪いかというところに大きく左右されるといえます。

そしてこの「間」だけはマニュアルでは絶対に取得することはできません。いわゆる職人の「コツ」みたいなもので独自に体得するほかないのです。そのため、将来もっとAIが発達すればどうなるかわかりませんが、現時点ではAIやコンピュータが優れた販売員に置き換わることは不可能なのです。まあ、もっともAIやコンピュータに早く置き換わってほしいくらいのダメ販売員もときどき見かけますが。(笑)

話をZOZOSUITに戻すと、究極的には数値を直線で結んだだけでは美しい服はできあがりません。肩と肘と手首を一直線に結べばそれで美しい服、体に合った服ができるかというとそうではありません。それを緩やかな曲線で結んだ方が良いこともあるのです。そしてその判断を下すのがデザイナーでありパタンナーであるのです。素人が体の各部位を計測してそれを直線で結べば良いという物ではないのです。先日、某高級テーラーを取材しました。そのテーラーでは体の各部位を測定し、それを型紙(パターン)にするのですが、出来上がったジャケットとパンツ(スーツですから)はいずれも計測したデータには基づいていない独自のアレンジが加えられています。ジャケットでいうと肘の位置を数センチ高くし、パンツは膝の位置を数センチ高くしてあります。

どうしてこういうことをするのかというと、そうすることで手脚が長く見えてスラっと見えるからです。自分の身体を他人と比べればわかるのですが、脚の長い人はどこが長いのかというと膝下が長いのです。太ももの長さは短足な人とあまり変わりません。ですから膝下が長ければそれだけ脚長に見えるのです。肘も同様です。ですからこのテーラーは美しい見え方を追求した結果、計測したデータよりも数センチ肘と膝の位置を高くするようにしているのです。こうした判断がZOZOSUITで可能でしょうか。またこうした判断をスタートトゥデイの誰が下すのでしょうか。

ですから、優れたデザイナーやパタンナーは現時点ではAIやZOZOSUITに職を奪われるということは考えにくいのです。AIに職を奪われないために、あなたはどういう強みを磨きますか?販売員にもそれが突き付けられているのだと思います。