感動サービスの実現に向けて―従業員の内発的モチベーションを向上させる3つのポイント

従業員エンゲージメント

前回の記事「感動サービスの実現に向けて―なぜ従業員の内発的モチベーションが重要なのか」で、従業員の内発的モチベーションが重要な理由について述べた。

しかしながら、内発的モチベーションというと、すぐに「やる気」と結びつけて、気合と根性と叱咤激励といった精神論的アプローチを取る企業がまだまだ多いのが実情である。

例えば、顧客満足度調査で、「店員の笑顔」が顧客満足度向上のために、もっとも重要な因子だと特定されたとする。その調査結果を見た店長が、店員に対して、「笑顔で接客するように!!」という指導をしたところで、どこかぎこちない笑顔になるだけである。これでは顧客に感動体験を提供することにはつながらない。本当の笑顔は内なる感情が表出された結果であり、それが顧客の心を動かすのである。感動サービスのカギとなる従業員の内発的モチベーションの向上は精神論的アプローチでは実現しない、方法論に基づく科学的アプローチが必要とされる経営課題であるという認識を持つ必要がある。

 

それでは、どうすれば従業員の内発的モチベーションを高められるのか。内発的モチベーション向上のためのすべてのポイントを網羅的にカバーすることは難しく、また業界特性や個別企業のビジネス特性によって必ずしも適合しない場合もあるが、ここではその基本的な考え方について、「内発的モチベ―ションの要件」と「管理者の役割」のそれぞれの観点から、3つのポイントを挙げて順に示したいと思う(図表)。

 

 

ポイント①:「意味性」と「ビジョン共有」

漠然とした対象に対して何となくテンションだけが上がっている状態である「やる気」とは異なり、内発的モチベーションは自分の仕事に対して意味づけされていることが重要である。それには顧客の定義と提供価値の定義が必要となる。自分は誰に、どういう価値を提供しているのか。言い換えれば、どのような形で自分は社会に貢献をしているのか。ここが腹落ちできていれば、人は主体的に動くことができる。

したがって、管理者の役割はビジョンを伝え、共有することで、部下が自分の仕事の意味性を理解することを手伝うことにある。ビジョン自体はトップが考えることかもしれないが、そうであったとしても、そのビジョンを自分自身はどのように理解し、解釈しているのか、自身の経験を交えて自分の言葉で語れることが管理者には求められる。また、ビジョンだけでなくバリュー(行動基準)もしっかりと共有する。バリューに基づいて行動しているかどうかを評価することで、部下の仕事に対する意味づけがより確かなものになり、持続的なものとなる。

 

ポイント②:「達成実感」と「認知」

仕事は自分のためでなく他人のためにするものであり、誰かのために価値を生みだし、提供することである。このように思えれば、従業員は自然と自分の頭で考え、行動を取ろうという気持ちになるものだ。しかしながら、そういった主体的行動は、得てしてマニュアルにないことである場合が多く、失敗のリスク、ひいては自身の評価が下がるリスクを伴う。つまり、従業員にとって創意工夫とはリスクの伴う行動なのである。

よって、管理者の役割は、創意工夫の結果がうまくいった場合は大いに賞賛し、仮に失敗に終わったとしても、それを指摘するのではなく、むしろその勇気を称える必要がある。失敗を指摘することで、「次からはチャレンジするのをやめよう」という気持ちにさせてしまい、またそれを見ている周囲の部下にも同じような気持ちにさせてしまうことになる。創意工夫に対する勇気を称え、賞賛する。そのようなフィードバックによる「認知」が従業員にとって内的報酬である「達成実感」をもたらし、さらなるチャレンジへの意欲につながっていく。

また、サービス業においては、管理者は従業員と顧客のやりとりをすべて観察できるわけではないので、顧客接点で実際に起こっていることを十分に把握できず、結果として従業員に対するフィードバックの絶対量が不足し、従業員が達成実感を得られていないことが多い。それだけに、顧客からフィードバックを収集し、それを従業員に届ける仕組みを構築することがとても重要となる(ここに現場でNPSを活用する利点がある)。それによって、従業員は自分の仕事に対する手応えを得ることができる。そのような機会を提供することも管理者の大きな役割と言える。

 

ポイント③:「能力発揮」と「人材育成」

自分の仕事の意味性を理解し、リスクの伴う創意工夫という行動が管理者や会社から認知されることが分かった。ただ、内発的モチベーション向上にはこれだけでは不十分である。人間は自分の能力を最大限に発揮できていると感じるときにやりがいを感じる生き物である。明らかに簡単、単調な仕事ではモチベーションはあがらない。少し背伸びをしないといけない仕事が与えられ、その成功体験を手に入れることで、「自分、できるじゃん!」といった自己効力感が高まり、それが成長実感という内的報酬になるのである。

ここでの管理者の役割は、能力発揮の環境を整備し、能力開発を支援することである。例えば、意図的に、その従業員にとって試練となるような仕事を与え、それを乗り越えるためのスキル向上を支援する。また、事例共有等のチームコミュニケーションの場、従業員同士がお互い学び合う場づくりをする。このような仕事マネジメント、ナレッジマネジメントといった、育成型マネジメントスタイルを重視する姿勢が管理者に求められる。

 

以上、従業員の内発的モチベーション向上のためのアプローチについて、その基本的な考え方をまとめてみた。精神論的アプローチではなく、科学的アプローチによって従業員の内発的モチベーションを向上し、感動サービス提供を実現することで、競争優位を築くことが重要である。