【事例に学ぶ】 ベテランシニアの「役に立ちたい」気持ちを引き出して、 中小企業と相思相愛に

エンゲージメント

働きかた研究所 平田未緒と申します。私はこれまで、パート・アルバイトさんが活躍している企業を、約20年にわたり取材し続けてきました。その経験から、パート・アルバイトさんが活躍している企業には、共通点があることがわかりました。企業側(社長・店長・正社員)と、働く側(パート・アルバイトさん)が、相思相愛の関係にあることです。

相思相愛とは、企業側が「この人に働いてほしい」「この人に働き続けてほしい」、働く側が「この会社で働きたい」「働き続けたい」と思い合う関係。そう、要はエンゲージメントなんですね。

ということから、この「エンゲージメントブログ」にて、連載を持たせていただいています。テーマは、企業とパート・アルバイトさんとのエンゲージメント、つまり「心のつながり」を作るポイントです。今回は、シニア人材のスキル・経験を存分に活かしている会社の事例から、見てみましょう。

経理のベテランシニアが「欠員が生じている間だけ」中小企業で働く仕組みが大ヒット

経理・財務業務の実務経験に長けたベテランシニアと、経理・財務業務の人材不足に悩む中小企業をマッチングさせるサービスが、口コミで広がりを見せています。20134月に設立された、「株式会社シニア経理財務」が始めたサービスです。

さらに2015年7月には、このサービスに1週間で100件を超える問い合わせがあるという「うれしい悲鳴」が上がりました。TBSの朝の情報番組「がっちりマンデー」の取材を受け、サービスが知れ渡ったのです。

そのサービスとは・・・働き手は、全員が60代。それも「経理財務業務を主に担当し、長年企業で働いてきた」ベテランに、「経理・財務業務における突発的・部分的な人材不足が生じた」中小企業で、「欠員が生じている間だけ」働いてもらう、という内容。これが、同社の社長、富澤一利さんの予想どおり、ヒットしました。

 

「シニアと中小企業、双方のニーズに合った」ことがヒットの大前提

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 株式会社シニア経理財務 代表取締役社長 富澤一利さん

ヒットの理由の第一は、商品にニーズがあったことです。つまり、経験を活かしつつそこそこ働きたいシニアと、経理に精通した働き手を一定期間確保したい中小企業双方のニーズを、ぴったりマッチさせたことでした。

富澤さんは説明します。

「当社のサービスは、こんな仕組みになっています。まずは、求人情報誌に『登録者募集』の広告を出し、応募を募ります。その後書類選考をし、通過した方と面接を行います。面接では、一人最低1時間はかけて、じっくりとお話をうかがいます。確認するポイントは、もちろんまずは経理の実務経験です。私自身、銀行出身であり、定年後再就職した会社で経理や財務も担当していましたから、面接相手の話を具体的に掘り下げて聞けば、その人が何をどのくらいのレベルで理解し、できるかが分かります」

「欠員が生じている間だけ」とはいえ、経営のある種肝である経理がずさんになっては困ります。そこで、すでに登録時点で「そうならないだけの実績をもった人材かどうか」を、シニア経理財務が事前にチェックしているというわけです。

 

入念な面談で登録者の「人柄」を知り、最適な人選を

その上で、富澤さんが登録者選定において重視しているポイントがもう一つありました。それは、登録者の人柄です。

「中小企業は、個性的な社長が多く、その社長の個性で成り立っているような場合が少なくありません。その社長と、会社の財務状況を把握する立場にある経理担当者は、仕事上の距離が、一般的にとても近いんです。つまり中小企業の経理担当者には、『社長に合わせられる』柔軟性が求められます。もちろん、そもそもの相性も大事ですから、面接では応募者の人柄や柔軟性をしっかりと見て、経理人材をご要望くださる社長と『合いそうな』人をしっかりと見定め、最適な人を選ぶようにしているのです」

そして、この「登録希望者との入念な面談」と、「最適な人材の選定」が、シニア経理財務のサービスがヒットした最大の理由「相思相愛」につながっていました。

「事前面接でうかがうことは、要するにご自身のご活躍の軌跡であり、長所です。ご自身の一番輝ける部分を丁寧にお聞きするので、それだけで『役に立ちたい』『がんばりたい』と思っていただけます。さらに、その方にピッタリの会社で実際に実務をしてもらうなかで、仕事先の社長や社員から『いい人に来てもらった』と思ってもらえれば、うれしさも百倍となり、自然に『さらにがんばろう』と思っていただけるようです」

 

三方善しの相思相愛が、社会に支持されている

相思相愛とは、すでに述べたように、企業側が「この人に働いてほしい」「この人に働き続けてほしい」、働く側が「この会社で働きたい」「働き続けたい」と思い合う関係です。シニア経理財務では、この状態を、ごく自然にしかし高度に、作り上げていました。

単にニーズに合致したからではなく、シニア経理財務と、登録するシニアスタッフご本人、実際に仕事を委託する中小企業という、三方善しの相思相愛が実現できていたからこそ、誰もが満足する仕組みとして、社会に支持されるに至ったのです。

取材・文/株式会社働きかた研究所 代表取締役所長 平田未緒

出典/http://hatarakikata.co.jp/horeta-kaisha1007/