商品での差別化はできない。店は顧客のコミュニティづくりで対応を

顧客体験

現在のアパレル市場は限りなく同質化していると個人的には見ています。その理由はさまざまありますが、いくつかをまとめてみます。

まず、“トレンド情報の情報源が同じ”だということ。これまでもアパレルのトレンドはパリコレや海外の展示会が情報源でしたが、近年はファッションアプリの発達によって、ストリートの情報もその情報源に加わりました。同じ情報をアレンジして商品化をするのだから、店頭に並ぶ商品が似てしまうのは仕方がありません。

次に、販売不振だからと他社の売れ筋を安易に追随することが挙げられます。バブル崩壊後の販売不振によって失敗ができなくなってしまい、オリジナル企画にかける時間がかつてほど取れなくなってしまったことや、デザイナーを減らさなければならなくなり、外部のOEM・ODMの請負会社に商品企画を委託する機会が増えたことも影響しています。これらの会社は各社からの商品企画を請け負うために必然的に似てしまうことも理由のひとつと言えます。

最後に、POSレジによるデータに頼りすぎているということもあるでしょう。POSレジで集計された「実績」を信じすぎると、単なる実績商品の再生産に陥ります。前に売れた商品をそのまま再生産して並べることになるからです。これではアパレル商品が同質化してしまうのもやむを得ません。

それでも2000年ごろまではいわゆる中価格帯を得意とする大手総合アパレル間での同質化に留まっていました。大手総合スーパーや低価格SPAブランドとは商品の見た目がまるで違っており、色柄、デザイン、シルエットすべてに歴然とした差がありました。

少し個人的な昔話をしますと、1994年に真っ黒のスーツを買おうと思ったことがあります。そこで「洋服の青山」や「紳士服のはるやま」に行ったのですが、ファッション用途の黒いスーツは売っておらず、略礼服しかありませんでした。そこであきらめて、当時は少しブームが下火になりつつあったDCブランドに行くと、ファッション用の黒いスーツがありました。定価が8万円くらいで、バーゲン時期でしたので5万円くらいに値下がりしていたと記憶しています。

ところが今はどうでしょうか。ファッション用の黒いスーツならツープライススーツショップ等で2万円未満の金額で購入できます。商品の見た目も大手アパレルブランドの商品とほとんど区別ができません。ユニクロやしまむら、ウィゴー、H&Mなどの低価格SPAが扱う商品はどうでしょうか?見た目だけならカジュアルブランドの商品とほとんど同じです。商品が同質化すると多くの人は価格が安い方を買います。これは洋服に限ったことではなく、それ以外の食品や家電等でも同じです。

商品が同質化した店は一体どのような方法でファンに訴求するつもりなのでしょうか?ましてや今はインターネット通販もあり、検索すれば同じブランドの最安値販売店がすぐに見つかります。「商品」や「ブランド」しか消費者にアピールポイントがないとしたら、確実に最安値の店にお客を奪われます。

同じ「商品」や「ブランド」でもこの店で買いたいと思わせるような取り組みがなければ、最安値のインターネット通販やアウトレットモール、在庫処分店などに確実に負けてしまうでしょう。では“この店で買いたい”と思ってもらえるような店になるための取り組みとはどのようなものがあるのでしょうか。


来店する理由づくりを

はっきりと「これ」だという解答は見つかっていませんが、いくつかの仮説ならあります。その1つはコミュニティを形成している店と言えるのではないでしょうか。

滋賀県の有力リージョナルチェーン店「ボーンフリー」では2年ほど前に取材に訪れた時にバンドを呼んでライブイベントを開催していました。また、グループ内の別店舗では今月(11月)は香水の作り方のワークショップの開催予定も告知されています。

ライブやワークショップを開催することで、買い物以外でお客様が集まりやすい環境を整えています。1973年の創業から42年に渡って地域から支持され続けているのは、商品やブランドだけを売っているのではなく、こういうコミュニティづくりにあると考えられます。

「商品」や「ブランド」だけでの他店との差別化には限界が生じますから、このようなコミュニティづくりに取り組んでみてはどうでしょうか。