地域密着型「ダイシン百貨店」の究極の顧客目線とおもてなしの心が高める顧客エンゲージメント

顧客エンゲージメント

東京・JR大森駅の西口を出て、昔ながらの下町の商店街といった雰囲気の通りを約10分ほど歩くと現れる「ダイシン百貨店」。「半径500メートル、シェア100%」というスローガンの下、お客様が欲しいと願うものはたとえ一点でも可能な限り取り寄せるというこだわりを持っているせいか、一般的なスーパーやホームセンターなどではほとんど見ることのなくなった昔懐かしい商品を目にすることができます。でもダイシン百貨店がお客様の心をつかんでいるのは豊富な品揃えだけではありません。高い顧客エンゲージメントはどこから生まれるのか、実際に足を運んでその理由を探ってみました。


安心・便利・楽ラクな買い物を可能にするサービスの数々

お客様の約50%以上が60歳以上だというダイシン百貨店。これは、1948年の創業以来、お客様と共に年月を重ねてきたことの表れかもしれませんが、年配のお客様に優しい次のようなサービスが充実していることも理由にあるのだと思います。

・配達便
「通常配達便」「しあわせ配達便」「即日配達便」の3種を用意し(地域指定あり)、特に「しあわせ配達便」は事前登録をした70歳以上の方、妊娠中の方、お体の不自由な方対象で、ペットボトル1本でも即日無料配達をしているのだとか。(配達エリアは半径1.5km以内)

・送迎バス
「お買い物に来ていただくためには、お迎えに上がろう」という考えの下、近隣エリアで5路線計68便を365日毎日休まず運行。ダイシン百貨店の「アップルカード」会員は無料で利用することができるのだそう。

・出前弁当
65歳以上のお客様を対象に、栄養のバランスを重視したワンコイン(500円)で楽しめるお弁当を配送料無料でお届け。配達時に安否確認も行い、もし何か変化が見られた場合は、緊急連絡先に連絡をするのだとか。

ダイシン百貨店の西山会長の教えは「自分のおふくろをもてなす気持ちで行動しろ」というものだそうですが、まさにこれらのサービスにその教えが反映されていますね。また、同店営業企画部チーフ・塩沢さんによると、「配達でオートロックのマンションへ伺う際、配達員がダイシンの人間だと分かるとそのまま開けてくださるお客様もいらっしゃいます」とのこと。まさにお客様の信頼の表れですね。これは従業員の皆さんが、お客様を自分の母親のようにもてなした結果ということでしょうか。


「ダイシンに行けば何でも揃う」の品揃え

冒頭でもお伝えした通り、ダイシン百貨店の一番の特徴はその品揃えにあると言います。お客様からのリクエストを受けて、売場担当者が問屋に問い合わせ、在庫があれば数日以内には店頭に並ぶそうなのですが、売れ筋商品はもちろん、あまり売れる見込みのない商品でもお客様がお求めになる限り店頭に陳列し、たとえ1個でも可能な限り仕入れることがダイシン百貨店のこだわりなのだとか。

ネットショップで販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えたり、対象となる顧客の総数を増やしたりする事で、総体としての売上げを大きくする物品販売の手法を「ロングテール」と呼びますが、ダイシン百貨店の販売手法はこのロングテールのリアル版だと言えそうです。

ダイシン百貨店では一体どんな懐かしい商品が扱われているのか、ほんの一部ではありますが、ここで一気に見てみましょう。

●ネズミ捕り
ネズミ捕り

●柳屋本店のポマード
柳屋本店のポマード

●オリエンタルマースカレー
オリエンタルマースカレー

●食卓カバー
食卓カバー

●カセットテープ&カセットプレーヤー
ダイシン百貨店の以外な売れ筋がカセットテープ。特に10分テープがよく売れるとのことなのですが、理由を塩沢さんに聞いてみると、「ご年配のお客様がカラオケの練習の際、メロディー再生専用として使用するからなんですよ」とのこと。なるほど! ですね。もちろんそのカセットを再生できるよう、カセットプレーヤーも充実の品揃えでした。
カセットテープ&カセットプレーヤー  カセットテープ&カセットプレーヤー

●二層式洗濯機
特にご年配のお客様は使い慣れているものを好むという理由から、2015年1月の時点で二層式洗濯機が9種類も販売されていました。
二層式洗濯機

ちなみに取材中、品揃えの豊富さに感心する私たちを見ていたお客様が「本当にここの品揃えはスゴイだろう?」とコメントされていたのがとても印象的でした。お店への愛着心から生まれる誇りの気持ちがこのコメントとして表れたに違いありません。


お客様一人ひとりのニーズに合わせた商品販売

ダイシン百貨店の魅力は、商品数の多さだけでなく、お客様一人ひとりのニーズに合わせた商品販売を行っているところ。例えば1つずつパック販売されているお寿司。これは年配のお客様の「あまり量は食べられないけれど色々食べてみたい」というニーズに応えたもの。

1つずつパック販売されているお寿司

他にも卵のバラ売りやお肉の少量パック販売などを行っていて、徹底的なお客様目線でのホスピタリティには頭が下がります。

卵のばら売り  お肉の少量パック


世代を超えた地域密着型の店づくり

前述の通り、お客様の約50%以上が60歳以上というダイシン百貨店ですが、それもこれも、1948年の創業以来ファンとなってくれたお客様と共に年月を重ねてきた証拠。お客様の高齢化が進みながらも、そこに深い絆があることから、親から子へ、その子からまた子へとダイシン百貨店の魅力が語り継がれ、生活の一部となっていることから、永続的・持続的な関係を構築できているのだそう。

ダイシン百貨店では子供からお年寄りまで、様々な年齢層のお客様が楽しめるようにと、屋上芝生ガーデン、レストラン、バンケットルームなどの場所で、イベントが頻繁に行われています。塩沢さんによると、「実はイベントは全部従業員の手作りで、イベント当日は各売り場の担当者が会場での接客なども兼務しているんですよ。その中でも特に『山王夏祭』は人気で、2日間で約2万人を動員するほどになりました」とのこと。地域密着型の小売店のイベントで、これだけの動員数というのは驚異的なのではないでしょうか。お祭の他にもコンサート、展示会、ダンスパーティー、カルチャースクール、ディナーショーなどを行い、地域のコミュニケーションの活性化に大きく貢献しています。

このようにイベントを通して利益の地域還元を行っているのは、小売りはモノを売る前にコトを売るべきだ、「モノ売りからコト売りへ」という発想によるもの。ダイシン百貨店が2012年にリニューアルオープンした時、ヒト・モノ・コトを結びつける場所として愛称を「オオモリノモリ」としましたが、地域住民にとって、森(杜)のような潤いと心地よさにあふれた場所となっているようです。また、「地域に欠かせないインフラを目指す」という目標から、「電気、水道、ガス、ダイシン」というキャッチフレーズを掲げているダイシン百貨店ですが、モノだけでなくコトも手伝ってくれる同店は、まさに生活に欠かせないインフラのような存在になっているのではないでしょうか。


以上、いかがでしたでしょうか。最後に下記顧客エンゲージメントフローをご覧ください。

顧客エンゲージメントフロー

ダイシン百貨店はビジョンやミッションの的確な伝達により顧客の共感を獲得し、優れた顧客体験の提供により愛着を生んでいます。だからこそ顧客エンゲージメントの強化につながり、それが顧客数の増大、顧客離反率の低下、持続的成長などにつながっているのではないでしょうか。


取材協力:ダイシン百貨店 営業企画部チーフ 塩沢紀行さん