役職のない組織体制「ホラクラシー」の導入で、ザッポスの約14%の従業員が退職! 従業員エンゲージメントへの影響は?

従業員エンゲージメント

以前、「サウスウエスト航空やザッポスの成長と高い顧客満足度に貢献したのは、『貪欲に従業員の声を聞く』ということ」の記事で、従業員の声を聞く風通しの良さや、明るい社風が特徴のザッポスをご紹介しました。

ところが先日、ザッポスの約14%に当たる210人が退職するというニュースが! 会社の利益や効率よりも社員の幸せを優先してきた同社に、一体何があったのでしょうか。


はじまりは「ホラクラシー」との出会い

2007年にアメリカの起業家ブライアン・ロバートソンが提案したのが、「ホラクラシー」(Holacracy)という組織運営のコンセプト。これは肩書きや役職をなくし、フラットな組織で会社を経営しようというもの。通常組織には「ヒエラルキー」(Hierarchy)という上下関係がありますが、ホラクラシーではチームやサークルによって組織が成り立つという仕組み。またホラクラシーは「ヒト」ではなく「タスク」を中心とした組織づくりを目的としているため、複雑な人間関係がなくなり、より多くのイノベーションが生まれるという考え方だそう。

柔軟な組織、効率的な組織運営、役割の明確化、主体性の強化を主な特徴とするホラクラシーに共感したのが、ザッポスのCEO、トニー・シェイ。ホラクラシーの導入で自身のCEOの肩書も含め社内全ての役職を取り払い、組織の効率改善に努めることを表明。社員に宛てたメールでも導入の経緯と考えを説明しました。彼は「このような大きな組織改革が行われる中で、引き続きザッポスで働きたいと思ってくれるのであればぜひ残ってほしい、でも賛成・適応できないなどの理由で退職を希望するのであれば、最低3か月の退職金を支給するから4月30日までに退社の意思を表明してほしい」との選択肢を社員に与えました。結果、全社員1500人の約14%に当たる210人が退職を決断したのでした。


「12の質問」から見るホラクラシーの従業員エンゲージメントへの影響

役員が横柄な態度を取らないように彼らのことを「サル」と呼んでしまうザッポスはもちろん、社長も役員も社員も皆が同じフロア、同じ机で働くというモットーを持つフェイスブックなどにとって、ホラクラシーは理想的なコンセプトなのかもしれません。でも管理や統制のない組織では従業員のパフォーマンスが落ちるのではないか、採用や給料の決定権は誰に持たせるのか、などの懸念点も多くあります。

また、従業員エンゲージメントの影響も大きいように思います。米世論調査企業ギャラップ(Gallup)が発表した調査結果で、マネージャーは従業員エンゲージメントを強化するためになくてはならない存在だということも分かっています。

ギャラップが1000万人の顧客、300万人の従業員、20万人のマネージャーを対象に行った調査から確立した、12個の質問(Q12©)を見るとその理由が分かるような気がします。これは次の12の質問を従業員に1~5点(1が強い否定、5が強い肯定)で答えてもらうことでエンゲージメントを測定するというものですが……

①自分が何を期待されているかを知っている
②必要な情報や道具を与えられている
③もっとも得意なことをする機会を与えられている
④良い仕事を認められ,褒められている
⑤誰かが気にかけてくれている
⑥誰かが成長を促してくれる
⑦自分の意見が尊重されている
⑧会社・仕事の使命・目的が重要だ
⑨同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている
⑩職場に親友がいる
⑪誰かが私は進歩したと言ってくれた
⑫仕事について学び、成長する機会がある

肯定的な回答をした従業員の多い企業は、エンゲージメントが高く、結果、生産性、利益、定着率、顧客満足度なども比例して高くなることが分かっています。また、従業員の回答規準が、直属の上司(マネージャー)であることも分かっています。ということは、マネージャーが従業員エンゲージメントを左右しているとも考えられます。

であれば、従業員一人ひとりの話に耳を傾け、目標や仕事の取り組み方、モチベーションなどの違いに目を向けられるマネージャーの存在はやはり必要なのではないでしょうか。なぜなら、それぞれの才能を引き出し、その才能を最大限に活用することが、エンゲージメントやパフォーマンスを高めることにつながるからです。

ザッポスはマネージャーのいないホラクラシーで、どのように従業員エンゲージメントを高めていくのでしょうか。「幸せを届ける会社」の今後に注目です。