スターバックスが高い顧客価値を創造することができた理由とは?

エンゲージメント

スターバックスマニアックス』(小学館文庫)の中で、同社の会長兼社長兼CEO、ハワード・シュルツ氏はこう話します。

 

ある統計によれば、私たちの年代は、両親の世代より年間100時間以上多く働いているといいます。加えて、携帯電話やメール、ファックスなど、プレッシャーを生み出すものがたくさんある。スターバックスは、そういうものから逃れて休息する場所、オアシス。私たちは店を「サードプレイス」といって、自宅と職場の間というポジションだと考えています。そして、そこで生み出されるのは「コミュニティー」というフィーリング。店を訪れた人同士がつながる、スターバックスはそういう場を提供しているのです。

家が1番目の場所(ファーストプレイス)、職場が2番目の場所(セカンドプレイス)だとしたら、家でも職場でもない3番目の場所(サードプレイス)としてスターバックス(以下スタバ)は私たちの特別な場所になりました。

ただ、決してスタバのコーヒーが特別おいしい、というわけではありません。他にもおいしいコーヒーを出してくれるお店は多くあります。でもなぜか「コーヒーが飲みたい」=「スタバ」という図式ができあがっている人も多いのでは。ではなぜそのようにスタバは私たちを惹きつけ、高い顧客価値を提供することができるのでしょうか。

 

①「コーヒーを買う」という体験そのものに価値がある


シュルツ氏は、コーヒーを提供するということだけでなく、「コーヒーを買う」という体験そのものに力を入れました。一昔前であれば、アメリカではコーヒーはダイナーなどで1ドル程度で飲めて、しかも飲み放題、というのが定番でした。でもシュルツ氏は、お店のオシャレなインテリア、間接照明、くつろげる音楽、フレンドリーなスタッフなどにこだわり、その体験の価値をぐっと上げました。だからコーヒーの味や値段はさほど気にならないのかもしれません。

私も前職で、オフィスビル内にあったスタバによく通っていたのですが、スタッフの方々に「いつもありがとうございます」と言われるようになった時は嬉しかったもの。ランチで訪れるレストランやクリーニング店など、よく通っていたお店の人には言われたことがなかった上に、いつも500円くらいしか使わないのにそんなこと言ってもらえるなんて! と妙に感動したのを覚えています。どんなに忙しくても笑顔とあいさつを決して忘れないところも好印象で、そんなことがスタバの体験価値をさらに高めました。

他のお客さんもきっと、スタバでしかできない体験にお金を払いたくなるのでしょうね。

 

②“ご褒美感”がある

行動心理学者のダン・アリエリー博士によると、私たちの脳は「これはいい」と思ったものをより楽しめるようにできているのだとか。だから実際スタバのコーヒーが他のお店で飲むコーヒーと大して味が変わらなかったとしても、ブランド名、体験、そして愛着心の効果で、脳が「スタバのコーヒーはどこよりもおいしい!」と思うのだそう。

そんな風に特別おいしく感じるスターバックスのコーヒーは、決して安くはないけれど、頑張る自分へのご褒美として、ワンランク上ながらも手の届く小さな贅沢品。お店に足を踏み入れた時のほっとする感覚、店員さんとの挨拶、飲み物ができるまでのワクワク感、お気に入りのソファーでゆっくり過ごすひとときなども、家や職場では得ることができない自分へのちょっとしたご褒美のような気がします。

 

③馴染みがある

例えば朝通勤中に「コーヒー飲みたいな」と思ったとします。恐らくその時、多くの人がスタバを思い浮かべるかもしれません。また、いつもとは違う街や国へ行ったとしても、スタバに行けばいつもの味やサービス、雰囲気に出会うことができる安心感や、居心地の良さがあります。

私も不思議なことに、チェーンのコーヒーショップとは無縁そうなビーチリゾートに行った時でも、朝は必ずホテルのコーヒーよりもスタバのコーヒーを欲します。「スタバは近くにあるかな」とインターネットで探して一店もない時はがっかり。でもそれこそがスタバのブランディングとポジショニングの強み。サードプレイスは確実に私たちの生活に根付いているようです。

 

スタバのような高い顧客価値を生み出すには、顧客エンゲージメント強化プロセスの最初のステップにある「ビジョンやミッションの的確な伝達」や「優れた顧客体験の提供」が欠かせません。そうすることで企業やブランドへの共感や愛着が生まれ、顧客価値やロイヤリティの向上、顧客数の増大や持続的成長につながります。皆さんも、スタバが特に力を入れたこの2つを、一度見直してみませんか?

引用:http://www.business2community.com/customer-experience/buyer-psychology-customer-value-people-buy-starbucks-coffee-0995182