エンゲージメント構築のためのNPS中級レッスン~NPSの数値比較について~

NPS

トータル・エンゲージメント・グループで企画を担当してます、なかやです。
この連載企画「エンゲージメント構築のためのNPS 中級レッスン」では、NPSに興味は持ってはみたけれども、いまひとつ活用方法がピンとこない、という方々に、NPSの「いいかんじの使い方」をお伝えしてゆきます。
第1回目では「NPSでもっとも大事なこと」を説明しました。
NPSがなぜ企業の収益・利益と相関するのか。また、その性質を使ってどんなことを知ることができるのか。とっても大事なポイントなのでまだご覧でない方は 「エンゲージメント構築のためのNPS中級レッスン~NPSってどう使えばいいの~」を読んでおいてください。
さて第2回目は「NPSでの数値比較」についてお話します。
 

NPSは絶対値で比較しても意味がない。

NPSを使い始めた方からよくこんな質問をいただきます。
 
   「NPSはどれくらいを目指せばいいんですか?」
   「マイナス値でした。プラスにしないとダメですか?」
 
NPSは、調査する地域や調査対象の業種によって、数字が変わるものなのです。
ブランドや体験について「親しい人にオススメする可能性」を聞き、0〜10の数値で回答するのが"究極の質問”のポイントですが、 評価スコアは国民性や文化に左右されます
南米やラテンヨーロッパの国々ではかなり高めに、日本や韓国などの国では低めに出るそうです。
なんとなく、イメージつきますよね?
そのため、異なる文化圏のNPSを単純に比較するのは意味がない、ナンセンスである、とされています。
また、同じ文化圏内であっても、対象とする業種や業態で、お客様の感じ方も変わりますので、業種や業態を横断したNPSの比較も、あまり意味がありません。
 
先日、IMJ社が 「15業界別 NPS®ベンチマーク調査 2015」という調査結果を発表しました。国内企業のNPSが、業界別にまとめられてますが、業界ごとに分けられているのは、上記のような理由からです。
この調査によると、「証券会社(店頭)」では最低(のNPSとなった企業)から最高(のNPSとなった企業)までのスコアの差が23ですが、「クレジットカード」では43となり、ほぼ倍です。スコアの高低にそれほど差のない業界、大きな差がある業界があるのもわかります。
高低差の大きな業界は競争が激しく、かつ、顧客体験の差別化が進んでいる業界と考えられ、高低差の小さな業界はある程度限られた市場で、顧客体験の差別化が進んでいない業界と考えられます。
この、同じ業界内での「高低差」の比較こそ、意味のある、そして、考えなくてはならないポイントなのです。
話をもとにもどすと、 自社のNPSを調査して数字を目の前にしても、同業他社がどうであるかがわからなければ、その数字を「いい」とも「悪い」とも言えません
(ちなみに弊社ではモニターを使った調査を実施してNPSの競合比較をお手伝いしたりもしています。)
では、NPSを自社で計測するだけではなにもわからないのか?
というと、そういうわけではありません。
 

定期的な測定値比較から改善取り組みの成否がわかる

定期的にNPSの変化を確認するのはとても大きな意味があります。
 
「先月と比較して、NPSは向上しているのか?」 
 
NPSを経営指標として導入している企業では、基本的にこのような使い方をしています。
測定間隔は、毎週でも、毎月でも、毎四半期でもかまいませんが、お客様の評価=NPSが 前回より改善しているかどうか、を追いかけていくことが重要なのです。
当たり前の話ですが、NPSを計測するだけで顧客体験がよいものになるわけはなく、 NPSを改善するための活動を、しっかりと実行しているかが最も重要なことだと言えます。
その点において、NPSにはユニークな特徴があります。
他の経営指標と異なり、設問設計次第でズバリなにをすべきかを顧客視点の行動レベルで明示できるのです。
 
「分析結果から、NPS向上にはなにをすべきなのか?」
 
がピンポイントで出てきます。
(改善ポイントを特定するには究極の質問だけでなく、顧客行動を細分化して体験評価をする必要がありますが、詳細はここでは触れないでおきます。)
 
やるべきことが明確にわかるので、顧客接点改善に関わる人たちに状況をどう説明し、どう当事者意識を持たせ、どう巻き込み、どのような行動をするか、が次回計測するNPSを左右することになります。
こう考えると、測定第1回目に出てくるNPSには、「へえ」「ふーん」という感想以上のものを持てませんが(顧客体験を分析することで改善ポイントはわかりますが)、2回目の測定からは 自分たちの顧客体験改善の取り組みの成果を示すバロメーターとして使える、とわかります。
 
ちなみに、NPSのデータをもとに行動し、行動の成果をNPSで計測するというサイクルを「クローズド ループ」(閉じられた環)と呼びます。
環を閉じる作業、「クロージング ザ・ループ」がもっとも大事なのです。
 

推奨者、中立者、批判者の比較から戦略が見える


NPSは、ご存知の通り、推奨者の率から批判者の率を引いた数字です。
たとえばNPSが「5 」という状態は、推奨者が批判者よりも5%多い、ということを示しています。
しかし、同じ「5」でも、推奨者が40%で批判者が35%(中立者が25%)という場合もあれば、推奨者が10%で批判者が5%(中立者が85%)という場合もあります。
前者のケースでは、究極の質問に対して9点か10点をつけている顧客が4割もいるということになるわけで、後者(1割)とは状況が大きく違うことが予想されます。
前者のケースならば、 批判者の層を中立者に持ち上げることができないかを検討するのが賢明と言えるでしょう。
後者のケースならば、 中立者の層を推奨者に持ち上げることができないかを検討するのが賢明です。
NPSの引き算計算をする前の率をどう捉えるか、は大きな戦略方針を教えてくれます。 

性別や年齢、地域、利用金額の大小などで顧客をセグメントし、セグメントごとに推奨・中立・批判の率を比較してみると面白い差が出てくることもあります。
また、CRMなどのシステムを導入している企業で、顧客ごとに累計利用金額や単位時間あたりの利用回数などがわかるならば、そうしたデータを推奨・中立・批判別に集計するとまた興味深いことがわかると思います。
なぜ推奨者を増やすことが大切なのかを数字で理解できるはずです。
 
 
次回は「推奨者・中立者・批判者の価値」についてをもうちょっと詳しくお話ししたいと思います。