シャープの「おもろい家電」に見る従業員・顧客エンゲージメントへの影響

エンゲージメント

2010年に、1990年から使っていた「目の付けどころがシャープでしょ。」というスローガンを、「目指してる、未来がちがう。」に変更したシャープ。「『オンリーワンで社会を変革してゆく』という企業姿勢をより鮮明に表す」という想いがあってのことだったようですが、先日発表されたのが、シャープが「おもろい家電」を増やすという、このスローガンを体現するような今後の展開でした。

昔はゼンマイ式カミソリ、しゃべる電卓、そろばんと電卓を一緒にした「ソロカル」など、「おもろい家電」が多くあったのも確か。でもいつしか社長のリーダーシップが強くなってしまい、指示待ちをする社員が増えたのが経営が傾いた理由、とシャープの高橋社長は語ります。だからこそ、社員が挑みやすいように、失敗しても評価する制度に変更し、ユニークな商品を多く生み出した往年の社風を取り戻して、経営再建に活かそうということなのかもしれません。

社員の声を聞き、権限委譲し、失敗しても評価するというシャープの企業風土改革は、会社と従業員がイコールパートナーとなることを示すことで従業員のモチベーションを向上させ、会社への愛着を生み、新商品開発提案増加や離職率低下などの従業員エンゲージメントを強化させることにつながるのではないでしょうか。

では顧客エンゲージメントはどうでしょうか。一例として、「おもろい家電」として発売されたお掃除ロボット、「プレミアムなココロボ」を見てみましょう。(周りに人がいる場合は、イヤホンを付けてご覧ください)

アニメの声優の声で「べ、べつに、あなたにほめてほしくて掃除したんじゃないんだからね」などと話すおしゃべり機能付きの「プレミアムなココロボ」、確かに「おもろい家電」には違いありませんし、アニメファンの方にとっては興味を惹かれる商品のはず。でも148,000円(税込)と、価格もなんともプレミアム! 実際全く売れていないようなのですが、アニメファンというターゲットのニーズやライフスタイルを把握しないまま開発してしまったからかもしれません。

「従業員を大切にします!」「シャープらしさを取り戻します!」というシャープの姿勢は素晴らしいと思います。企業が元気になるということは社会が元気になるということだから、シャープのように従業員がイキイキと働けるような取り組みを、多くの企業に行ってほしいとも思います。でも残念なことに、従業員に寄り添った結果、顧客の声がないがしろにされてしまっていることが「おもろい家電」から見えてしまうのです。だからそこに深い共感や愛着は生まれませんし、本来顧客エンゲージメントが強化されることで「プレミアム価格での購入」という行動を引き起こすはずなのですが、今回売れていない状況を見ると、顧客エンゲージメントの強化に至っていないことが予想できます。

売上・利益の拡大と企業の持続的成長に欠かせないと言われるエンゲージメントですが、「顧客エンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」の両輪がうまく回ってはじめてこういった結果をもたらします。だからこそこの二つの取り組みは、一体となって進めなければならないものだと言えるでしょう。