顧客の体験価値を上げるためのファッション・アパレル業界の創意工夫から見えたのは、顧客の声を聞く力を養うことの大切さ

顧客満足度

顧客の体験価値を上げることが企業・ブランドの成長につながるわけですが、言うは易く行うは難しでしょうか。でもそれがビジネスのコアにあると言っても過言ではありません。

現代マーケティングの父と称されるフィリップ・コトラー氏も

現代のマーケティングは、どれだけ顧客の深層心理に迫れるかの勝負である。マーケティング部門は数字をいじり回しているだけでは存在価値がない。

と言い、マネジメントの父と称されるピーター・ドラッカー氏においては

真のマーケティングは、顧客から出発する。 すなわち人間、現実、欲求、価値から出発する。

と言っています。

多くの企業・ブランドが顧客の体験価値を上げようとさまざまな努力をしているはずです。そして競合から先んずることができた企業・ブランドが成長しています。オムニチャネル時代に突入し、さらに多くの企業・ブランドが顧客中心主義を掲げ、顧客に目を向けている今、のんびり構えている暇はありません。


顧客中心に組み立てられたアパレル企業のオムニチャネル事例

ここではユナイテッドアローズを例としてご紹介しますが、同社は

・リアルタイムで近隣店舗の在庫を確認できるアプリ
・ネットでの購入検討商品をリアル店舗へ取り寄せて試着ができるサービス
・店頭で購入に至らなかった来店者に、試着品の品番メモを渡し、帰宅後にネットショップから商品を簡単に検索して、他ブランドとあわせて比較検討することができるサービス
・過去に顧客が同社のネットショップで購入した商品(履歴のある商品)と販売中の商品のサイズをサイト上で比較することのできるサービス(サイズに対する不安感解消が目的)

といったオムニチャネル施策を採用しています。ネットとリアルに足りないところを補い、顧客とあらゆる接点でつながることで、顧客の体験価値と利便性を高めることに成功しました。


顧客の体験価値を高めるためのファッション・アパレル業界の創意工夫

ユナイテッドアローズのように、最近ではネットとリアルどちらでも同じ感覚で買い物ができるような環境を提供する施策に加え、より高い体験価値と顧客のニーズに応えるサービスが求められています。そんな中、顧客の体験価値を上げるための”革命”とも呼べる創意工夫がファッション・アパレル業界で次々と生まれているようです。

①バーチャル試着
バーチャル着せ替え(コーディネート)の機能をサイト上やアプリなどで提供するブランド・メーカーは多くありますが、セレクトショップのアーバンリサーチが2014年に期間限定で池袋パルコに設置した「ウェアラブルクロージング」と呼ばれる大きな端末は、お客様の満足度と大きく向上させる進化版だと言えます。これは、60型大画面の液晶に設置されたカメラで体型を正確に読み取り、体のラインにぴったり合わせた服の試着を可能とするバーチャル試着端末なのですが、気に入ったコーディネートがあれば、そのまま液晶からカートに入れ、発行されたQRコードをスマホで読み込むことで、同店のネットショップで購入することができる仕組みに。

アーバンリサーチのプレス&マーケティング部門のマネージャー、齊藤悟氏は「変な表現だが、リアルでネット通販体験ができることを目指した。リアルとネットの中間点、O2Oの“2”の部分」と説明。将来的には全商品の試着・購入を可能にするだけでなく、無人店舗としての展開を考えているのだとか。まるで、子供の頃、テレビや映画で見たSFの世界が現実になったかのようです。

ウェアラブルクロージング

ちなみにアメリカには、これに似たシステムで「Metail」と呼ばれるものがあります。これは家にいながら自分の写真をアップロードし、サイズをネット上で入力すると、自分の分身が現れ、試着ができるというもの。試着ができないというネットショップの弱点を克服するシステムですね。


②どこでも使える自分のサイズ表

アメリカのデパートやモールには、「Me-Ality」と呼ばれる透明のカプセルがデパートやモールに設置されています。このカプセルに入ると自分のぴったりサイズが3Dスキャンで測定され、そのデータをもとに、Me-Alityのパートナーであるブランド・メーカーの中からぴったりサイズの商品のリストを受け取ることができるのだとか。サイズ規定が徹底されていないアメリカでは、ブランド・メーカーによってサイズが大きく異なるので、販売側には返品率の大幅な減少、購入側にはそれぞれの店舗に出向いて試着をする必要がないというメリットがあります。

③安い・早い・高品質のオーダースーツ
「オーダースーツ」と聞くと「高い」「時間がかかる」「店に入ったら最後、買わずに出られない」なんてイメージを持っている方も多いかもしれません。でもそういったイメージを払拭し、ビジネスファッションに革命をもたらしたのが、ネット上で低価格&スピーディーにオーダースーツを作ることができるサービス。

LaFabrics(ラファブリックス)」は「ジャストフィット」「自分でデザインが選べる」「高品質のMade in Japan」「お手頃価格」なスーツをネット上だけで買うことができるサービス。同社の代表の森雄一郎は、自分だけでなく周りが皆服のサイズで悩みを抱えていたことを知り、「多くの人が抱える悩みを解決するオーダーメイドを世の中に広めてみたい」とこのサービスを提供。スーツだけでなくシャツやジーンズなどの取り扱いもあり、既製品の限界を解消し、お客様一人ひとりが心から満足できる商品の提供を行っているようです。

カナダにあるIndochinoも、オーダースーツをネットで完結させるサービス。同社創始者のAll Heikal Gani氏は、学生時代にコスパの良いスーツを探していたものの、「デザイナースーツは高すぎるし、予算内で買えるポリエステル製スーツは品質が悪くて体にもフィットしなかった」という自身の経験から、同サービスの提供を思いついたのだとか。

両社は中間業者を省いて顧客と仕立て向上を直接つなぐことで低価格を実現しています。また、試着・プロによる採寸を行わずに顧客のサイズを正しく得ることができるシステムを構築し、万が一サイズが合わなかった場合の保証サービスも充実させているため、顧客は安心して家にいながらオーダースーツを作ることができるようになっています。Indochinoは各都市での「採寸イベント」などを行って、どうしても自分での採寸が心配な方に対して安心を提供、同様にLaFabricsも近々出張採寸サービスの用意を検討しているのだとか。

ネットとリアルの境界線が取り払われる中に見られる創意工夫の数々。どれも、顧客の声を聞き、潜在的なニーズを掘り起こすことで生まれたものです。アンケート、クレーム集計、コールセンター、ミステリーショッピング、NPS(ネットプロモータースコア®)などの方法を用いてそれらを定点的に測定することが、時代にあったサービス、次世代を見越したサービスの提供と、顧客の体験価値向上につながるのではないでしょうか。