リストラで人件費を減らしてもブランドの売上高は浮上しない

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リストラで人件費を減らしてもブランドの売上高は浮上しない

ワールドの500人解雇、アシックスの350人解雇、TSIホールディングスではブランドの大量廃止が発表されるなど、苦戦が続く大手アパレル各社の人員削減が伝えられています。これ以外にも発表はされていないものの、100人単位で人員削減を計画している大手もあるとの情報もあります。

企業の経費は変動費と固定費に分けられ、固定費の中でも大きな割合を占めるのが人件費です。当然、不採算事業を立て直す場合、もっとも手っ取り早いのが人件費の削減であることは言うまでもありません。


人件費削減だけでは企業業績は回復しない

多くの企業は、業績改善を目的として、真っ先に不採算ブランドを廃止し、それにまつわる人員を解雇します。割増しの退職金を支払ってでもその後、継続的に人件費を支払うことを考えるとそちらの方が安上がりとなるのです。

さて、人件費の削減で企業は支出が減って一息つけるのですが、本番はここからです。企業やブランドを立て直すためには、「売れる」新製品の開発が必要となります。売れる製品がなければいくら人件費をそぎ落としてもじり貧になるだけです。

なぜなら人件費の削減はあくまでもコストを削減するための取り組みであり、当然のことながら商品が売れなくては、売上高はそれ以上に増えないからです。また人員が減っていますから社員一人当たりの業務の負荷も大きくなり、売上高が増えないままだと疲弊してしまって士気も低下します。士気が低下すればますます業績は上向きません。


「売れる」新商品開発が不可欠

池井戸潤さんのヒット小説でドラマにもなった「ルーズヴェルト・ゲーム」では、苦境に立った青島製作所は人件費を削減するために大リストラを行います。しかし、それだけで苦境は脱せません。血のにじむような挑戦の結果、高性能の新型イメージセンサーの開発に成功します。イメージセンサーというのはデジタルカメラやスマートフォンに使われる部品のことで、これが高性能であればあるほど鮮明な画像が撮影できるというものです。

そして、その新型イメージセンサーの開発途中で、超小型イメージセンサーの開発にも成功します。新型イメージセンサーは大手の新型デジタルカメラに、超小型イメージセンサーはスマートフォンへの採用が決まり、青島製作所の売上は回復するのです。そして、最後には大増産のためにリストラした社員も呼び戻すことになります。

これはフィクションの話ですからハッピーエンドに終わっていますが、現実ではここまで上手く行くことは珍しいでしょう。しかし、作者の池井戸さんは元銀行員なので絵空事ではなく、ビジネスにとって重要なことも描かれています。青島製作所が持ち直したのはリストラもさることながら、売れる新製品を開発したことが最大の理由です。

アパレルやその他の業種でも同じでしょう。売れる新製品・売れるブランドがなければ、その企業は売り上げを縮小したままになります。悪くすればさらに業績は低下し続けます。経営者が考えるべきはリストラのその後、「どうやって売れる商品・売れるブランドを作り出すか」です。


「厳しさ」だけではない社内のムード作りも必要

繊維業界紙記者として、取材を通じて多くのアパレル企業を見てきましたが、リストラ後、さらなる効率重視と経費削減でまったく失敗のゆるされない厳しい環境に追い込まれたことが多くありました。ファッションビジネスには厳しさも必要ですが、同時に愉しさも必要です。また水物みたいな要素もありますから、100%どの商品もヒットさせることは不可能です。

そういう企業風土を如何にして作り上げるか。これがもっとも重要で難しい課題なのではないでしょうか。