「ムヒ」でおなじみ池田模範堂は、「小さなお客さま」の声を大切にする素敵な会社だった

顧客エンゲージメント

かゆみ止めと言えば「ムヒ」をイメージする方も多いのではないでしょうか。かゆみ、虫さされ、かぶれ、しっしん、じんましん、あせも、しもやけ、皮ふ炎、ただれと、さまざまな皮膚の悩みを解決してくれるので、私にとってムヒは子供の頃からずっと愛用してきた薬ですが、他にそういう薬があるかと聞かれたら特に思い当りません。そう考えるとすごいですよね。さらにすごいのがムヒの名前の由来です。「唯一無比」、「天下無比」などの、「比べるものがないほどすぐれた効き目」の商品という意味を込めた「無比」からつけられているそうです。

そんなムヒを製造しているのは、薬売りの伝統で知られる富山県にある池田摸範堂。長年愛用される薬を作る同社には、ロングセラー商品が生まれる理由が分かるビジョンやストーリーがありました。


「社員が誇れるいい会社」を創る企業文化

「社会の模範になろう」というのが社名の由来だと言う池田模範堂は、創業103年の歴史を誇る会社。その長い歴史はあくまで成長の過程としかとらえていないようで、老舗であっても常に成長を続ける「若者」でありたいと考えているようです。

池田模範堂が掲げているビジョンは「社員一人ひとりが誇れる ”いい会社”になる」。そしてそのために作られた経営スローガンが「変身への挑戦」。安定した利益が出ているけれどあまり成長していない会社よりは、変化を恐れず革新的な製品やサービスを提供して持続的成長を続ける会社の方が、社員が誇れるいい会社になりますよね。

だから池田模範堂では変身への挑戦を重ね、ムヒだけでもクリーム、液体、スプレー、パッチ、キッズ用、ベビー用など、お客様の症状や好みなどに合わせた商品開発を積極的に行っています。社員数は300名(2015年4月現在)ながらも、ラインナップしている商品数は33種類(2015年8月現在)、売上高は133億円(2014年11月期)を達成し、安定的な成長を見せています。

2011年4月には「肌を治すチカラ」という新しいキャッチコピーを掲げ、事業領域を「すべての肌の悩み」へと拡大したそうですが、より多くのお客様の肌の悩みを解決し、感動や喜びにつなげることも、池田模範堂の誇りともなっているのではないでしょうか。

池田模範堂の社員の皆さんは、「教育・研修が充実している」「職場の雰囲気が良い」「社内体制がきちんとしている」「若いうちからチャレンジできる」「意見や考えを尊重してもらえる」といった点を自社のいいところとして挙げ、社員に多い特徴を「まじめ」「フレンドリー」「仕事熱心」「明るい」「個性豊か」と挙げていますが、こうした企業文化が「変身への挑戦」を促し、「肌を治すチカラ」のある商品を作り、「社員一人ひとりが誇れる ”いい会社”になる」というビジョンを実現しているように思います。


どんなに些細なお客様の声でも、真摯に向き合う企業姿勢

「いい会社」池田模範堂の姿は次のような心温まるエピソードにも見ることができます。

ある日、アンパンマンがパッケージに印刷された目薬について、小学生の女の子からお客様相談室へ電話があった時のこと。

商品名『◎◎こども目薬』の袋を破ると、どうしても、アンパンマンの顔が破けてかわいそうです。アンパンマンが痛そうなので、なんとかしてください。
出典:Spotlight

という訴えを聞いたお客様相談室の室長は即対応し、翌月の社内報告会で次のように報告したそうです。

女性6歳からの苦情でした。お客様の悲痛な訴えを受け、上層部と掛け合った結果、 製造上、切り口を変更することができないため、絵柄を変更することにより、お客様の苦情に対処することに成功いたしました。お客様にも、後日、対応策をお知らせいたしました。なので、今月から絵柄が変更されています。みなさん、確認しておいてください。
出典:Spotlight

大きな企業にとってみたら、このような訴えは“些細なもの”かもしれません。でも謙虚に真摯にお客様と向き合い、その声を商品に反映させる姿は、まさに社名にある「模範」となるものだと思います。

池田模範堂のビジョンや真面目なものづくりの精神に対しては共感を、お客様の声に耳を傾ける姿勢や、同社の販売する製品・サービスに対しては愛着を覚えます。共感と愛着は顧客エンゲージメントの向上に欠かせないものですが、顧客エンゲージメントが高いからこそ、リピート購入をしてくれるお客様や、既存商品の改善、新商品開発につながる意見・要望のフィードバックをしてくれるお客様が増え、それが同社の売上・利益の増大や、持続的な成長につながっているのではないでしょうか。