市場が小さくなっても成長する企業は、「声」を聞く

コラム

成長を続けるアパレルメーカーを辞めた藤谷拓が、転職先にトータル・エンゲージメント・グループを選んだキーワードは、CS(顧客満足度)とES(従業員満足度)でした。売上げの拡大ばかりを重視し、お客様の声や従業員の思いを顧みない経営陣に対し、企業としてそれで良いのだろうかと、違和感を覚えるようになっていたのが転職の大きな理由です。

藤谷は1997年、洋服メーカーへ入社します。千駄ヶ谷のマンションの一室に事務所を置いて活動を始める、マンションメーカーもしくはマンションブランドといわれたアパレルメーカーがなり立ちの会社でした。当時の社員は13人。家族そろって洋服をコーディネートできる、ファミリーブランドの先駆けでした。 

そのブランドは時代の流れに乗り、入社3.4年後には従業員が500名に増え、売り上げは10億円から100億円まで伸びていきます。大店舗法の改正も規模拡大を後押ししました。次々と建つ大型の商業施設に出店していき、100店舗まで拡大しました。ここで藤谷は、採用・教育・販促・ディストリビューションなど、幅広い業務を経験します。 

当時は大店舗改正で市場は成長しており、洋服が売れに売れたので、お客様を大切にすることや、再度来店してもらうことをほとんど意識していなかったと、藤谷は振り返ります。人材採用については、毎年200名の新卒が入社し、170名が1年以内に辞めるような状況で、まさに使い捨てでした。

藤谷がその状況に疑問を持ったのは、2004年のデベロッパーでの賀詞交換会でのことでした。商業施設を次々と展開する大手不動産の経営者が、挨拶で
「今後ESやCSを重視しない会社とは付き合わない」
と宣言したのです。

今のままではいけないと感じた藤谷は、そのアパレルメーカーを辞めました。

VOCで成長を続ける

現在、アパレル業界で業績に苦しんでいる会社は、二つの大きな要因に対応できていないと、藤谷は分析しています。一つは多様なECアパレルの売り上げが伸びていること、もう一つは自社のリアル店舗で良好な顧客体験が求められていることです。

放っておいても服が売れていた時代は、似たようなテイストのブランドが隣に出店してきても、自店の売り上げは変わりませんでした。現在は出店があると、売り上げが二分されてしまいます。お客様一人一人に対し丁寧にアプローチしてブランドのLTV(顧客生涯価値)を上げないと、継続した売り上げにはつながらないのです。 

転職してから、数々の大手アパレルで、NPSの導入を通じてカスタマーサクセスを支援している藤谷。クライアントの窓口は、お客様相談室やCS推進室の担当者です。かつて在籍した会社には、そのような部門はありませんでした。しかしお客様の声(VOC)に耳を傾けない企業は、市場の縮小に連動して事業規模が小さくなります。実際に、藤谷がかつて在籍していた会社は、全盛時の半分以下にまで縮小しているといいます。

トータル・エンゲージメント・グループの事例として登場するクライアントの担当者は、お客様の声を聞く必要性を感じ、熱意をもってNPSを業務に取り入れています。現場の販売マネージャーや担当者を巻き込み、現場スタッフが夢中でお客様との関係性をよくしていくことでお客様がリピートするという、プラスのスパイラルが生まれています。NPSを導入した部門では、導入していない部門と比較して、圧倒的な成果を上げています。

良い製品やサービスは、世の中にあふれています。その中から選ばれるブランドになり、今後も成長していくためには、従業員と経営陣、お客様と販売員の関係を大切にすることが不可欠なのです。