<蔵出しレポート1>顧客ロイヤルティ、エンゲージメントをどうやって高めるか?Net Promoter Customer Experience Conference 2014 in Miami

エンゲージメント

今回は、2014年1月30-31日の2日間に渡って、フロリダ州マイアミで開催された「Net Promoter® Customer Experience Conference」(以下、略称「NPSカンファレンス」)の内容をご紹介する記事(1回目)をお届けします。  

 

NPS®が紹介されてから10年が経過!

ネットプロモータースコア(Net Promoter Score:NPS、以下NPS)が世界に初めて紹介されたのは、Fred Reichheld氏が寄稿した2003年のハーバードビジネスレビューの記事においてでした。つまり、既にNPSが知られるようになってから既に10年が過ぎたことになります。

カンファレンス会場

▲熱気あふれるカンファレンス会場

Reichheld氏は、NPSの開発に当たって多数のデータ収集・解析を行いましたが、それを支援したのが、Reichheld氏が取締役を務めるSatmetrix社です。

以来、Satmetrix社は、べイン&カンパニーと共にNPSの啓蒙普及活動を行なってきており、その一環として2007年よりNPSカンファレンスを毎年主催してきています。8年目となる今回は、NPSの10周年を記念するカンファレンスとして、特に上質なコンテンツ、プレゼンターを用意した、充実した内容だと感じました。

今回は、Satmetrix社CEOのRichard Owen氏のキーノートスピーチの内容を踏まえて、NPSの価値がますます高まる背景についてご紹介します。

NPSの価値がますます高まる背景1:ソーシャルメディアの台頭

Owen氏はNPS登場以来の過去10年を振り返る中で、Twitter、Facebook、LikedInなどのソーシャルメディアの急速な普及を大きな変化として示しました。ますます多くの人々が、ソーシャルメディアを通じてポジティブ(好意的)な口コミ、また逆に否定的(ネガティブ)な口コミをやりとりし、そうした口コミに基づいて、ブランド選択、購買意思決定を行うようになった今、「友人知人への製品サービス推奨意向」を聞く究極の質問を活用するNPSが、経営・マーケティング活動の良し悪しを端的に示す価値ある効果指標となってきたというわけです。

NPSの価値がますます高まる背景2:価格の透明性

NPSとは、対象となる製品・サービス等の推奨意向を0点~10点の10点満点で評価してもらい、その回答結果から3つのカテゴリーに分けます。すなわち、9点、10点という高い評価をつけた人を「推奨者(プロモーター)」、7点、8点の評価をした人を「中立者(パッシブ)」、6点以下の人を「批判者(デトラクター)」と3分類します。

そして、推奨者から批判者の構成比を引きます。この数字がNPSです。たとえば、プロモーターの構成比が50%、デトラクターの構成比が30%としたら、NPSは20(50-30)となります。このNPSの計算式からわかるように、NPSを向上させるためには推奨者を増やすこと、あるいは(同時に)、批判者を減らすことがお分かりかと思います。

さて、NPSを向上させるためには、お客さまに優れた「顧客体験」を提供することがますます重要になってきています。なぜなら、Owen氏によれば、価格の透明性が年々高まってきたたからです。

近年は、製品の機能・性能などにおける差異化が困難になってきたことに加えて、価格における差異化がどんどん困難になっていきました。というのも、ネットを使えば、消費者は簡単に同一製品や類似製品の価格を簡単に比較できるからです。しかも、スマートフォンの普及によって、店頭においてさえ、競合他店やECサイトと簡単に価格比較が可能になった。

売り手としては、従来のように、「安さ」や「お得感」でお客さまを買う気にさせることができなくなってしまいました。となると、例えばリアル店においては、店員さんの優れた知識や、誠実でフレンドリーな対応等を通じた優れた顧客体験の提供で競合優位性を確立するしかありません。

既に、優れた顧客体験によってNPSが向上可能であると述べましたが、逆に言えばNPSを効果指標として活用することによって、より良い顧客体験のための絶え間ないサービス改善ができるということです。価格の透明性が進んだことにより、差異化のポイントは「顧客体験」に完全に移行してしまった。したがって、NPSを活用したあらゆる顧客接点でのサービス改善行動が重要になってきました。

NPSの価値がますます高まる背景3:ライフタイムバリューエコノミー

Owen氏は、ビジネスモデルが従来の「売り切り型」ではなく、「会員型(Subscription)」や、カーシェアリングのような、時間単位で製品を共同利用する「シェアリング(sharing)型」へと移行しつつあることを指摘しました。

売り切り型では、購入の度にいったん取引は完結していましたが、会員型やシェアリング型では、顧客との関係は継続的なものであり、「今回の購入ではいくら使ってくれたか」という都度購入単価ではなく、1年、あるいは3年、5年といった長期のスパンでの「総利用金額」の考え方でお客さまとの取引を評価することができます。

これはまさに「ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)」による評価にほかなりません。ライフタイムバリューに基づけば、新規顧客の獲得、あるいは既存顧客の維持のために適正なコストがいくらか、ということも長期的な視点で算出できるため、一見、コストのかけ過ぎと思えるような手厚い顧客サービスも、実は投資として十分見合うというロジックが成り立ち得ます。

Owen氏は、こうしたライフタイムバリューの考え方でビジネスを考えることのできる時代をライフタイムバリューエコノミー」と名付けました。まさに私たちは、ライフタイムバリューエコノミーの時代に突入しているのではないでしょうか。

ライフタイムバリューエコノミーにおいては、いったんお客さまとなった人々をできるだけ長くお客さまでいてもらうために、継続的に優れた顧客体験を与えることが必須です。したがって、やはりここでもNPSの活用が有効となっていくということになります。

NPSカンファレンスの正式名称が、「Net Promoter Customer Experience Conference」となっていることからもわかりますが、NPSの導入においては、「顧客体験」にフォーカスすることがますます重要になってきているということでしょう。もちろん、優れた顧客体験とは、「顧客エンゲージメント」が強化されるような体験です。いいかえると、お客さまと企業、担当者との間の「きずな」が強くなるような体験ですね。

NPSカンファレンスの他の内容は、エンゲージメント・ブログ記事で随時ご紹介していきます!お楽しみに。

10周年記念ケーキ

▲参加者全員にふるまわれた10周年記念ケーキ

NPS(R)はBain&Company、Fred Reichheld、Satmetrix Systemsの登録商標です。

 (執筆者)

松尾順

松尾 順

株式会社シンクー

エンゲージメントフォーラム CEO(Cheif Engagement Officer)