セミナーレポート「顧客起点で捉え直す『組織文化』と『ブランド』が目指す先 〜大手アパレルブランドとD2C企業の場合〜」

セミナーレポート「顧客起点で捉え直す『組織文化』と『ブランド』が目指す先 〜大手アパレルブランドとD2C企業の場合〜」

セミナー

昨今、製造小売事業者や小売事業者にとって、「顧客体験をいかに最大化するか」ということが最重要課題となっており、多くの事業者は、新しいテクノロジーの導入やサービスの活用など様々な工夫でこの課題を解決しようとしています。

ところが、技術やツールだけが先行してしまい“顧客の不在”を招いてしまっているという例も見られます。

では、「顧客体験の最大化」という最重要課題を本質的に解決するためには、何をすればよいのでしょうか。

今回のセミナーでは、この課題の本質的な解決のため、「顧客を起点とした“組織文化”と“ブランド”の重要性」について三部構成での講演が行われました。

 

第一部では、当社代表取締役の池田順一が、「顧客中心文化へのパラダイムシフト」をテーマに、事例を紹介しながら、顧客体験を最大化させる方法と組織改革の推進方法について紹介。

第二部では、ナビプラス株式会社の戦略推進室室長の高橋敏郎氏が、「顧客ロイヤルティを高めるために必要な”対話型”マーケティング」をテーマに、第三部では、株式会社フラクタの代表取締役の河野貴伸氏が、「熱狂的なファンを作る!D2C企業で取り組むブランディング施策」をテーマにそれぞれ登壇しました。

今までの成功体験が通用しなくなってきた

 

冒頭で、池田は今までの成功体験が通用しなくなってきた要因が3つあることを示しました。

<今までの成功体験が通用しなくなってきた3つの要因>

①マーケティング的要因

②デジタル要因

③プロセス要因

 ①マーケティング的要因については、顧客と従業員にまつわる2つの課題があります。

顧客にまつわる課題としては、人口減少による売上減少の時代に入ったこと。従業員にまつわる課題としては、採用が難しくなってきたこと、離職率が増加したこと、売り手市場などで原価が上昇する時代に入ったことがあげられます。

この他にも、商品の差別化がしづらくなったこと、市場の成熟化、競争激化などもマーケティングを大きく変化させた要因としてあげました。

 

②デジタル要因については、デジタルトランスフォーメーションがあげられます。テクノロジーの進化による新たな価値が創造されている例として、池田はカメラをとりあげて説明しました。

 

1)フィルムカメラがデジタルカメラに変わったことによって

2)写真現像の工程がなくなり、オンライン上で写真データを送受信する仕組みが生まれ

3)写真データを使った新たなサービスやビジネスの仕組みが生み出され、SNSを中心にオンライン上で世界中の人々が写真データをシェアするようになった

 

これはまさに、カメラ・写真というカテゴリーにおいて、新しい価値とサービスをつくりあげていくというデジタルフォーメーションが起こった事例です。今までの成功体験が通用しなくなったことがよくわかります。

 

 また、オムニチャネルについても説明しました。デジタルトランスフォーメーション後は、店舗とネットは別々に考えるのではなく、いかに融合させるのかがポイントとなります。特に、ネットはいつでも接点を持つことができるので、デジタルで接点を持ちながら、いかに店舗(オフライン)を活かすのかが戦略として重要になっています。

 ③プロセス要因については、システム開発のプロセスと事業のプロセスの2つにわけられます。

システム開発(主にソフトウェア)については、その開発手法が、ウォーターフォール型からアジャイル型に変化しました。つまり、最初から完全に商品化するのではなく、『要件定義→設計→開発→実装→テスト→運用』といった開発工程を、機能単位の小さいサイクルで繰り返して商品化していくようになったのです。同じように、事業化のプロセスもシステム開発のウォーターフォール型からアジャイル型への変化と同じように変化してきていると説明しました。

 

このように時代の流れ、主に技術革新の影響から、今までの成功体験が通用しなくなってくることは理解できるでしょう。では、なぜ今顧客体験が必要なのでしょうか。

 

顧客体験(CX)が、なぜ必要なのか?

 

顧客体験に関して、まずフォレスター調査によるデータを紹介しました。このデータによると、アメリカのCEOが顧客に対し最⾼のエクスペリエンスを提供していると回答した割合は80%。これに対して、顧客が最⾼な体験をしたと回答した割合はわずか8%。企業と顧客との認識には、なんと72%ものギャップがあったのです。では、このギャップはなぜ起こるのでしょうか。

池田によると、それは顧客の受け取る価値は、物理的な価値と感情的な価値の2つで構成されていることが原因と考えられます。

商品のコモディティ化が進む中、物理的な価値は同じであっても顧客体験が悪く感情的な価値が低い場合は、顧客の受け取る価値は低くなります。反対に、顧客体験がよければ、顧客の受け取る価値は高くなります。いかに顧客の体験価値を高められるかが重要なポイントであることがわかります。先に述べたギャップもこれが原因にあるため生じたと考えられます。

顧客体験の必要性が理解できたところで、実際に、顧客中心で事業を行っているアメリカの3つの会社の取組を具体的にみていきました。

 

事例1:サウスウエストエアライン

 

サウスウエストエアラインは、顧客体験やNPSで有名な会社で、NPSを使って劇的に業績を回復したことが有名です。サウスウエストエアラインのミッション(使命)は「『暖かさ』『親しみやすさ』『個々⼈の誇り』そして『企業の精神』によって、『最⾼の顧客サービス』の提供に努めること」ですが、その素晴らしいサービスは次の動画を見たらよくわかります。

 サウスウエストエアラインは、顧客中心のサービスによってNPSは高く、他社と比較してクレーム率も圧倒的に少なくなっています。

 

事例2:アップルストア

 アップルストアは「最高のアップル体験を提供する」をミッションとしている会社です。池田によれば、アップルストアのGenius Bar(ハードウェアの修理対応をしている)は、サービス提供終了30分後に「さっきのサービスはいかがでしたか?他の人にも勧めますか?」というような質問を顧客にしているそうです。

そして、100人のお客様のうち72人がGenius Barを他の人にもすごくおすすめする(10段階のうち10もしくは9)と回答しており、ミッションでもある「最高のアップル体験を提供」しているといえます。そして、アップルストアは、顧客体験を高めることで⽉商6,000ドル/1平⽅フィート当たりという財務的結果を出しています。

また、ここで重要なのが、顧客の声をリアルタイムでアップルストアのスタッフが見ることができるようにしていることだと池田は言います。

イメージしてみてください。あなたが、サービスを提供した30分後「先ほどの○○さんの対応は、神対応でした。感動しました。」という回答が伝わってきたら嬉しいですよね。また頑張ろう、いいサービスを提供しよう!という気持ちになります。これが常に行われているのがアップルストアです。

事例3:ザッポス

ザッポスは、アメリカにある靴のネット通販会社で、徹底的な顧客中心主義で売り上げを伸ばしていることで有名な会社です。また、Amazonに約800億円で買収されたことでも有名で、「Amazonが屈服した企業」「Amazonを震撼させた企業」などとも言われています。池田は、2016年に実際に本社を訪問しており、そのときの話も交えながら紹介が行われました。

 

以下は、CEOのトニーシェイの言葉です。

「幸せを届けるってだけだよ。お客様はサービスに価値を感じるから買うんだ。クーポンや値引きは⼀切しないよ。だって、それはドラッグと⼀緒。そんなもので幸せは持続しない。そんなものに頼った販売は、逆に顧客の離反に繋がるさ。」

 

以上3社の事例も踏まえて、私たちはどうやって、顧客体験を定着させていけばいいのでしょうか。

顧客体験を最大化させていくには

 池田は、顧客体験を最大化させる方法として、顧客体験を数値化してPDCAを繰り返す方法を説明しました。顧客にまつわる数値はいろいろありますが、顧客体験に関連するもので、売上と相関関係があるNPS(顧客推奨意向)。このNPSを数値をベースに改善活動を継続していくことで顧客体験を最大化させることが可能になると言います。

NPSの計測はとてもシンプルです。

①   「△△を友⼈や同僚にすすめる可能性は、どのくらいありますか?」と質問

② ①の質問に対して、推奨する人の割合から批判する人割合の数を引けばNPSの数値がでてきます

 

そして、重要なのは、算出されたNPSの数値を“批判者を減らす”という視点からではなく、“推奨者を増やす”という視点からPDCAを繰り返すことです。(ただし、ケースバイケースではありますが、、)

まさに、アップルストアは、この“推奨者を増やす”という視点からNPSの取組が行われていると考えられます。

 

顧客中心文化をつくるには -組織改革を推進するには-

 顧客体験の最大化への取組みのような、顧客中心文化をつくるには、以下のようにいくつかポイントがあると池田は言います。

 ①    NPSが売り上げに貢献できるのかを確認するための経済性検証を行う

②    PDCAをまわしながら運用することが重要なので、現場にもNPSの有効性を説明する

③    実行担当者が、周囲を巻き込んでいく(あらゆる階層において)

④    スモールサクセスしながらやっていく

 

NPS施策を運用していくには、全社一丸となって取り組んでいく必要があります。それには、まず、この施策を売上に貢献できるのかどうかという検証が必要になってきます。そして、その数値をもって現場から社長・役員にまで、その有効性を説いていかなければいけないでしょう。

その上で、スモールサクセスを繰り返しながら運用していくのがポイントです。トータル・エンゲージメント・グループでは、このようなNPSを導入していこうという企業のために、NPS Start PLANを準備しておりますので、ご興味のある方は、ご確認ください。

https://www.total-engagement.jp/

 

ここ2、3年で、顧客体験などの認識が高まってきており、問い合わせが急に増えてきており、これからは、ますます顧客中心文化に取り組む企業が増えるだろう、と池田は結びました。

 

今、顧客体験(CX)が必要な理由は?-マーケティング視点から-

 

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第二部では、ナビプラス株式会社の戦略推進室室長の高橋敏郎氏が、「顧客ロイヤルティを高めるために必要な”対話型”マーケティング」をテーマに話をしました。

 「なぜ、今こそ顧客体験が必要なのか?」という疑問に対して、髙橋氏によると、マーケティング手法の限界(製品のコモデティ化、差別化が難しい、旧来の商品設計の考え方、ポジショニングの考え方、統計的な属性に基づいたユーザーニーズの特定の困難)から生じているということでした。

では、「顧客体験を最大化」するためには何をしたらよいのでしょうか。そのためには、やはり顧客を起点とした“組織づくり”と“ブランドづくり”をする必要があり、手法としては、 “顧客との対話(個客としての経験データの収集)” が今のトレンドになってきているとし、事例を交えながら解説をしました。

事例として紹介されたうちの一つに、お花のECサイトを運営している会社の事例がありました。この会社は、カートやコラムからの離脱率が高いという課題を抱えていたそうです。一般的な施策ではこの課題は解決しなかったため、率直に離脱理由を聞くという施策をとったところ、実は、その離脱はギフトの際に住所を確認するための必要な離脱だったことが判明しました。そこで、カートに入っている商品をメールで送ってあげるサービスを開始し、コンバージョン率を改善させました。

まさに、行動履歴データだけでなく、“顧客との対話”で顧客体験データを直接取得し、ユーザーエクスペリエンス(UX)を改善させた事例で、これからも“顧客との対話”という手法が有効であることがよくわかります。

 

ブランディングの最終目的は「企業価値を向上させ、お客様に選ばれ続ける」こと

 

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第三部では、株式会社フラクタの代表取締役の河野貴伸氏が、「熱狂的なファンを作る!D2C企業で取り組むブランディング施策」をテーマに話をしました。

 

河野氏は、まず「そもそもブランディングとは何か」について問いを投げかけました。河野氏によると、ブランディングとは企業が生き残るための基本戦略のことで、最終的には“企業価値を向上させ、お客様に選ばれ続けること”が目的。

そのために重要なことは、誰に、何を、どうやって提供するのか、それをなぜやっているのかで、それが決まらないと実際に何をやるのかが決まらないと説明しました。

また、ブランディングに必要なブランドストーリーについても、それらが決まっていればいくらでも持つことは可能だとしました。

そのうえで、河野氏は、ブランドロイヤリティを構築するためには

①できるだけ自分たちの手を使うことと
②顧客とのコミュニケーションの習慣化

などが重要であるとしました。

①については、熱狂的なファンになってくれる可能性がある人に対して、商品の感想をダイレクトに聞くことが有効。

②については、顧客調査の結果からなにを決めたいのか?顧客の意見をなにに用いるのか?顧客のどんな反応が意思決定の材料になるのか?を決めたうえで顧客とのコミュニケーションを習慣化することが重要だとしました。

また、河野氏によると、今は企業自体がブランドになりつつあって、すべての企業は、商品やサービスで明確な差別化が難しい時代になってきているそうです。そのため、それらの周辺領域まで含めた全体の顧客体験まで設計しないと顧客に選んでもらえない時代になってきており、顧客体験はブランドの重要なコンテンツの一つとなっていると結びました。

 

セミナーのまとめ

今回のセミナーでは、製造小売事業者や小売事業者が抱える「顧客体験をいかに最大化するか」ということが最重要課題を解決するため、「顧客を起点とした“組織文化”と“ブランド”の重要性」について三部構成で解説がされました。

それぞれに共通しているのは、「大きく時代が変化してきていること」、そして、この時代の変化に対応するには、「顧客を起点に考える顧客中心文化が重要」であるということでした。

顧客中心文化が重要だと理解できても、それを定着させることは、すぐにできることではありません。しかし、今、時代は大きく変化しており、今回の登壇者はそれを身をもって感じていることがよく伝わってきました。

さて、みなさんは、どうされますか?
少し考える時間をとってみるのもいいかもしれませんね。