「マーケティングの父」コトラーと「アマゾンを震撼させた」ザッポスの考え方から再認識する顧客エンゲージメントの効果と重要性

エンゲージメント

早いものでもう3月。年度末を迎えている企業も多いのではないでしょうか。3月〜4月は変化が多くバタバタしますが、春の訪れとともに新年度を迎え、新たな目標設定をすることで身が引きしまり、モチベーションも高まりますよね。

欧米では近年、組織目標としてエンゲージメントの強化(絆の形成と強化)を掲げるところが増えてきました。これはエンゲージメントを強化することで、顧客数の増大、顧客離反率の低下、売上・利益の拡大、持続的成長などが期待できるからです。エンゲージメントには顧客エンゲージメントと従業員エンゲージメントの2つがありますが、今日は顧客エンゲージメントに焦点を当て、マーケティングの父とアマゾンが800億かけても欲しかった企業の考えをもとに、その効果と重要性についてお話ししたいと思います。


新規顧客の獲得に躍起になると、顧客離反率が低下する?!

「現代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラー氏は、著書『コトラーのマーケティング・コンセプト』の中で、

残念ながら、企業は新規顧客の獲得に傾注しており、既存顧客の維持や既存顧客との取引拡大には、あまり熱心ではない。 企業のマーケティング予算の実に70%が新規顧客の獲得に費やされている。 ところが、収益の90%は既存顧客からもたらされているのである。 新規顧客を獲得しても、獲得後、数年間はかえって赤字になる企業も多い

と言っています。これはコトラー氏の

1. 新規顧客の獲得には、既存顧客を満足させ維持するのに要するコストの5倍はかかると考えられる
2. 満足している顧客は何度も購入してくれる
3. 満足している顧客は、そうでない顧客よりも購入額が高くなる
4. 満足している顧客は、その企業を他の見込み客に紹介してくれる

という「顧客を大切にすべき4つの理由」に基づいたものですが、この考え方は下記顧客エンゲージメントフローそのものといってもいいかもしれません。

顧客エンゲージメントフロー 

さらにコトラー氏は、

新規顧客の獲得に躍起になり、既存顧客を顧みない企業の場合、年間の顧客離反率は10%から30%になる。 こうなると企業は、顧客の減少を穴埋めするために、新規顧客の獲得と元顧客の呼び戻しにさらなる資金を注ぎ込むという、終わりなき悪循環に巻き込まれてしまう

とも言っています。この数字を見ると、顧客の共感と愛着を生み、信頼と絆を築き、顧客エンゲージメントを高めることがどれだけ重要かがお分かりになると思います。お客様一人ひとりと向き合い、期待以上のサービスを提供し、感動と幸せをお届けすることができたら、必ず企業・ブランドは成長すると思います。


アマゾンが唯一恐れた会社「ザッポス」は、根っからのエンゲージメント・カンパニー

「感動と幸せをお届けする会社」と聞いてまず思い浮かぶのが、アメリカの靴のオンライン小売、ザッポス。日本では事業展開していないにも関わらず、同社CEOトニー・シェイ氏の著書『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』で彼とザッポスのファンになったという日本人も多くいるほど。

上記顧客エンゲージメントフローで、エンゲージメント強化によって期待できるものに「リピート購入」「友人・知人への推奨」がありますが、ザッポスの成長の一番の原動力となっているのもリピート顧客と口コミなのです。顧客エンゲージメントの高さが大きな成長につながったといういい例です。

ザッポスの面白いところは、広告ではなく、カスタマー・サービスと顧客体験に費用をかけているところにあります。会社がマーケティングを行うのではなく、顧客に口コミでマーケティングしてもらおうというのがザッポスの哲学だからです。

そんなザッポスは、SNSやメールが主流になりつつあるカスタマーサービスにおいて、コールセンターに重きを置いています。なぜなら顧客と一対一で話すことができ、そこで素晴らしい体験をした顧客が、友人・知人に自身の体験を話し、それが口コミとして広がるからです。同社が他の企業と違うのは、コールセンターをコストカットさせる場所ではなく、最高の顧客体験を提供する場所と考えているところ。だから同社のコールセンターには「Customer Loyalty Team(顧客ロイヤルティチーム)」という名前がついています。

また、ザッポスのウェブサイトに行くと、どのページに行ってもページ左上にカスタマーサービスの番号が表示されていることに気づきます。(下記参照)

ザッポスのウェブサイトに行くと、どのページに行ってもページ左上にカスタマーサービスの番号が表示されていることに気づきます

最近のECサイトでは電話をしたくても電話番号が載っていないところも多くありますが、それだけで不信感を覚えることも。だからこうして「お客様とお話をしたい」という同社の姿勢には共感を覚えます。電話での処理時間を測らず、1件の電話にどれだけ時間をかけても構わないとしており、これまでの最長時間はなんと6時間! 同社の顧客ロイヤリティが高い理由がわかりますね。

他にもザッポスでは、お届けと返品の両方で送料無料はもちろん、リピート顧客には翌日配達へのアップグレード、自分たちの在庫にない靴を探している顧客には、競合他社で在庫のあるサイトを探してそれを教えるというサービスまで提供していますが、全ては顧客満足のため。同社の取り組みは顧客エンゲージメントを強化する共感と愛着を生むものなのです。

新年度を前に、皆さんもエンゲージメントを高めるためにできること、考えてみませんか?