「戦略とは捨てることなり」 顧客目線を大切にし、原点に立ち返ることでユニクロが断捨離したのはクールビズ

顧客エンゲージメント

東洋経済オンライン(2015.06.08)に掲載された「ユニクロの『決別』にクールビズの限界を見た」は、企業・ブランドのあり方について考えさせられる興味深い記事でした。


認知度9割を超えていても、見慣れた言葉は風景になる

2005年に始まり、早10年目を迎えた「クールビズ」。スタートしたその年にユーキャン新語・流行語大賞のトップテンに選定され、一気に浸透しましたよね。今では認知度9割を超えるまでになり、毎年この季節になるとクールビズをうたうプロモーションを多く目にするわけですが、中でも目立っていたのがユニクロ。チラシやメルマガはもちろん、駅のホームなどでも毎年クールビズの広告を見ました。

ところが今年のGW以降、ユニクロのチラシからその言葉は消えてしまったのだとか。なぜかといえば、10年たって「クールビズ」は使い古された言葉に変わり、新鮮味を失ってしまったから。認知度の高い言葉を使うのは楽だけれど、見慣れた言葉は風景のようなもの。それに「クールビズ」を見て「夏物のビジネス衣料をそろえよう」というニーズは減少の一方。であれば、お客様がチラシに何を求めているべきか、考えるべき。お客様は「自分の近くにある店でどんな商品が展開されているのか」を知りたくてチラシを見るはずだから。必要なもの不要なものをはっきり分けて不要なものを捨てる、これは顧客目線で考えられなければ実行できないことです。


原点に戻るということは断捨離するということ

原点は大切と知りながら、主軸を外れて社会の方向性や顧客の興味のベクトルに合わせて動いてしまうこともありますよね。ユニクロが今回「クールビズ」との決別を判断したもう一つの理由が、原点のカジュアルウェアに戻るためだそう。

ユニクロの需要が大きいのはビジネスウェアではなく、普段着、家着、作業着、運動着などのカジュアルウェア。さらに今日本でトレンドとなっている、スポーツウェアを普段のファッションに取り入れる「スポーツミックス」や、アメリカでブームになっている、ファッション性が高くリラックス感のあるスポーツウェアを買い物や休日ランチの時などに着る「アスレジャー(Athleisure)」(運動競技(athletics)と余暇(leisure)を組み合わせた英語の造語)という現象を重視し、より多くの人のライフスタイルに寄り添ったものを展開する方向へとシフトしていくようです。

これも前述と同じ「不要なものを捨てる」決断です。いわゆる「断捨離」と言えるのではないでしょうか。

秋元康さんが以前「記憶に残る『幕の内弁当』はない」と言いました。これは、幕の内弁当のようにあれもこれもと詰め込んでしまうとその魅力が半減してしまうので、断捨離すべきということ。確かに人気駅弁ランキングを見ても幕の内の姿はなく、いかめし、かきめし、とりめし、うにいくら弁当など、素材を限定したものが人気ですよね。

弁当に限らず、事業も同じこと。次から次へと新しいものや異なるものを詰め込んで幕の内弁当型の経営をするのではなく、ユニクロの場合で言えばカジュアルウェアという一つの事に注力してオンリーワンの存在になることが、企業の魅力と価値を高めるのではないでしょうか。

顧客目線に立ち、不要なものを捨て、原点に戻って集中すべき事業を絞る今回の決断により、ユニクロがより“らしさ”を打ち出すことができるのか、今後が楽しみです。

参考:
http://toyokeizai.net/articles/-/72405
http://funtoshare.env.go.jp/coolbiz/index.html